スマートシティ化から見えるさまざまな課題

最終更新日:2021年01月06日

都市のスマート化には、豊かで快適な誰ひとり取り残さない社会が期待されています。その実現のためには大きな変革が必要で、越えなければならない多くの課題があります。 今、スマートシティ化を進める中で見えてきた課題をみていきましょう。

海外で進められているスマートシティ化の課題

海外ではスマートシティ化の実証実験が実施されています。しかし、エネルギーや交通などの個別分野に対する課題解決のために実施したものあって、都市全体や市民生活の課題は解決されていません。

さらに、多くのプロジェクトが実証実験の後にビジネスモデルが確立できないまま、プロジェクトが完了してしまうなど、継続的な運用やサービス拡大につなげられていないのが現状です。

日本におけるスマートシティの進捗

海外で先行的にスマートシティプロジェクトが実施されているので、日本ではそれらの結果を踏まえて、住民中心のまちづくりを目指すスーパーシティ構想が計画されました。このスーパーシティ構想を実現するためには、既存社会の規制を緩和していく必要があります。

国内では2020年5月27日に「国家戦略特別区域法の一部を改正する法律」が成立し、スマートシティ化への法的な点はクリアされました。目指すまちづくりはスマートシティよりもさらに大きな規模で、街をまるごと未来都市化するというスーパーシティ構想です。

スマートシティとスーパーシティの違いとして、スマートシティは先端技術を個々にトライアルする実証実験のことを言います。スーパーシティはさまざまな先端技術を複合的に使ってハイテク化された都市のことで、すでに国家的なプロジェクトが進められています。

スマートシティ化で見えてくる課題

スマートシティ化は2000年代以降にはじまった取り組みで、その規模からまだまだ事例が多いとは言えず、現段階でも想定される課題や実践してみてから見える課題が多々あります。

具体的に懸念されている課題についてみていきましょう。

プライバシーの課題

スーパーシティ構想で提唱している世界観は、高度化されたサービスの最適化やパーソナライズ化を目指しています。そのためには多くの個人に関するデータを収集、集約して生活の利便性につながる情報を共有していくことが必要になります。

今でも駅への人出や駅周辺の人出の数値など個人を特定しない程度の統計的なデータはすでに取得しています。将来的に目指していくまちづくりは、すべての人が快適に過ごせるようなサービス提供を目指しています。そのためには、より個人にセグメントされた情報の収集が必須になりますが、同時に個人が特定できる情報も含まれる可能性があります。

例えば、Aさんが街に買い物に行く際、交通系ICカード等の情報からどのような交通機関を利用し、街中の防犯カメラやセンサーを用いてどのルートを利用したのか分かります。また、キャッシュレス決済のショッピングによって何を買ったのかなど、街中の防犯カメラやセンサーによって個人の特定が簡単にできるようになります。

このようなことから”監視社会になってしまう”という懸念が生まれ、すでに海外でのスマートシティ化プロジェクトの中では問題視され、情報収集に関する計画の一部が変更されたという例もあります。

スーパーシティ構想を進めていく上では、すべての住民が情報の収集や利活用にたいして合意が得られるかが今後の課題になってきます。

住民の合意が得られるのか?

スーパーシティ構想で目指す社会は、特別区域内で事業を営む企業や在住する住民の情報をデータ連携基盤である都市OSに集約し、データを共有してサービス利用の利便性を高める社会です。

実現するためには、計画段階で住民や利害関係者の合意を証する書面の提出をもとに規制改革などを実施しサービス開発を進めていく必要があります。しかし、企業や住民がパーソナルに近い情報の提供に合意を得ることができるのかは未知数です。

スーパーシティとなる特別区域に指定する自治体は、人口増加や国による金銭的援助、企業誘致なども見込めるため、特別区域の立候補には積極的になります。しかし、スーパーシティを実現するためには住民全員の合意がなければシステムは完全ではありません。

規制緩和と個人情報

改正法案において、スーパーシティ構想の実現に向けた規制緩和ができるようになっています。自動運転やドローン運用にむけた特別措置は問題ありませんが、個人情報データを都市OSに集約できる点も緩和できてしまい、個人情報保護の観点からすると心配されている面があります。

医療介護の点では、ある程度綿密な個人情報が連携されているほうが安心ではありますが、犯罪抑止のための監視やプライバシーを考えると、国家による過剰な情報管理が行われないか心配する声もあがってきています。

サイバー攻撃のリスク

テクノロジーを高度化して未来的な都市を作っていくためには、ICTやビッグデータなどの高速通信技術やデータ収集が必要不可欠になります。さらにIoTによってさまざまなものがインターネットと接続されれば、ハッキングなどの被害が発生してしまうことも懸念されています。

特にスーパーシティ構想によって、個人の医療データやキャッシュレス決済などがさまざまなサービスに紐付けられてくるため、金銭的な被害につながります。

また、都市OSと呼ばれるスマートシティの基盤となるシステムをハッキングされてしまった場合、これらの情報を人質として自治体に対して身代金要求をされてしまう場合もあります。

こうした被害にあうと、都市機能が停止してしまう可能性があるため、セキュリティ対策は充分にしておく必要があります。

インフラ不具合や人為的ミスによるリスク

スマートシティでは自動運転が発達し、工場や工事など危険な場所での作業はロボットが実施しています。自然災害への備えや探知なども行われるため、事故や災害などは減少していきます。

その一方で考えられる懸念は、センサーの不具合やソフトウェアの欠陥、システム障害などインフラの不具合やデータの取り扱いに関する人為的ミスの発生です。不具合やミスによる損害は、負傷や死亡、情報漏えいなどのリスクが生じてしまう可能性があります。

これまでの社会インフラシステムと違うのは、データや機能が連携されてくるため、どこかに不具合やミスがあった場合、連動して機能不全を起こしてしまう可能性が懸念されています。

未来を作るには越えていくべき壁は多い

スマートシティ化された場合の懸念もありますが、計画段階で越えなければならないハードルもいくつかあります。

例えば、それぞれの企業が提供しているアプリケーションや保持するビッグデータを企業間で連携していく必要があります。それぞれの権利・利益のために、すぐに共有することは難しいでしょう。さらに自治体と企業とのデータ連携も同様です。

また、海外事例の課題とも同じように、国の予算内でのプロジェクトから企業や自治体が収益化して継続的に運用できるビジネスモデルを考えていくことも必要になります。

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