スマートシティを維持するビジネスモデル

最終更新日:2021年01月05日

日本でのスマートシティ化に向けた取り組みの多くは企業主導型のプロジェクトです。企業が関わる以上、スマートシティ化は収益性の見込めるビジネスモデルであることが必須です。

現在、プロジェクトが進んでいるスマートシティ化のビジネスモデルとはどのようなものがあるのかみていきましょう。

スマートシティ化が生み出すビジネスチャンス

スマートシティ化は、新しいテクノロジーを使って新しい価値を生み出す街づくりを目指します。先端技術と街づくりの両方の知見を持ってプロジェクト化する必要があります。そのため、大手コンサルティングや通信事業者、不動産デベロッパー、ネットワーク企業を中心に、多様な利害関係者が関わり幅広くビジネスが展開されていきます。

しかし、関わる利害関係者が多いほど、街のディテールに関する意見の集約は難しい作業になります。プロジェクトを立地する地域独自の課題などを行政や市民、企業それぞれで協議し、要素を整理して最適な方向性を導き出すことが必要です。それはプロジェクトを推進するリーダーとなるソリューション企業には求められる資質になってくるでしょう。

スマートシティ化が生み出す経済効果の例

海外で行われてきたスマートシティ化プロジェクト事例では、国家主導による実証実験の域を脱することができませんでした。建設後の街の維持や運営を国の補助金や参画企業の研究開発費用で支えてしまう場合が少なくありませんでした。

スペイン・バルセロナで2000年から実施されているスマートシティ化プロジェクトでは、2010年までの10年間で企業数が4,500に増加し、そのうち約半数がスタートアップ企業、約3割が知識・技術集約型企業の内訳となっています。また、56,200人の新たな雇用創出、年間89億ユーロ(約1兆円)の取引増加という経済効果が確認されています。

参照:総務省 スマートシティの事例 https://www.soumu.go.jp/main_content/000447791.pdf

中国の杭州では、EC企業のアリババが主導するスマートシティ化が2017年より進められています。具体的な経済効果を語るにはまだ早い段階ですが、交通状況で信号機の自動コントロールや監視カメラ映像のAI検知による違反取締などを実施することで、自動車の移動時間を15%短縮や、緊急車両の到着時間半減などの成果が確認されています。

参照:「スーパーシティ」構想にかかる各国現地視察等報告 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/dai38/shiryou2_2.pdf

国内のスマートシティプロジェクト例①

日本でのスマートシティ化事例は、ICTを活用して自治体が住民にさまざまなサービス提供をしていく「スマートシティ会津若松」やエネルギーの需要バランス最適化を達成している「横浜スマートシティプロジェクト」などの事例はあります。しかし、多くのプロジェクトは実証的な試みのため、民間企業のプロジェクトのように費用対効果や収益性といった観点は持ち合わせていません。

そんな中で注目されているプロジェクトのひとつが、トヨタ自動車(株)が静岡県裾野市に建設する「Woven City」です。「Woven City」は、街づくりの中心をトヨタが担い、人々がリアルに生活する環境のもとで新しい技術の導入・検証が行われる実証都市です。

トヨタは、販売自動車以外にもレンタカー、タクシー、保険、カーシェアなどさまざまなモビリティサービスを、基幹システムとなるモビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)と連携します。これらの接続するサービスから蓄積されるビッグデータを活用して、それぞれのモビリティサービスでのさまざまな場面で情報供給をしていきます。

「Woven City」がマネタイズできるポイントは、自動車販売は当然ながらレンタカー、カーシェアなど、モビリティ関連のサービスの利用料金などによる安定的な需要を持つことです。さらにプラットフォームを活用した新サービスの展開などで新しくマネタイズできる事業を探っていくことになるでしょう。

国内のスマートシティプロジェクト例②

千葉県柏市「柏の葉スマートシティ」では、千葉県柏市と三井不動産(株)が進めているスマートシティ化プロジェクトです。2000年から柏市の都市計画に基づいた区画整理事業が開始され、2005年つくばエキスプレス「柏の葉キャンパス駅」の開業がありました。

2008年に千葉県・柏市・東京大学・千葉大学による「柏の葉国際キャンパスタウン構想」によって公・民・学が連携して街づくりを実行するなど、街の機能が年々アップデートされてきました。現在、開発は第2ステージに入っており、大学・病院・商業施設を柏の葉キャンパス駅から半径2km圏内に配置、人や情報などを駅周辺に集中させてデータ収集と活用を実施します。

不動産デベロッパーが主導に入ることで、不動産販売を主軸に魅力的な街づくりを進めてきました。この街ではビッグデータの活用を中心としたスマートシティ化を展開する予定です。検討されているマネタイズ方法は、収集したデータをデータバンクとして蓄積、データ利用時に住民やユーザーに利用料を徴収することを想定しています。

将来的にフローが確立できれば、他のスマートシティにビジネスモデルを別のスマートシティプロジェクトに横展開することで利益を得る収益モデルも検討しています。

将来的なスマートシティ化のビジネスモデル

トヨタや三井不動産が進めているスマートシティ化のように、企業主導で開発を進めるプロジェクトでは巨額な初期投資が必要です。また、中長期的には回収できるような収益化を想定しています。

投資費用を回収していくには、先端技術の導入にチャレンジしつつ、収益化可能にするビジネス視点での落とし込みが必要です。UAE(アラブ首長国連邦)や中国のように政府が統制を取りやすい国家では、ドラスティックにプロジェクトを進められます。

しかし、日本や欧米などでは自治体や住民とのバランスを調整しながら開発してくスタンスが求められます。そのため、街づくりにノウハウを多く持つ不動産デベロッパーなど、企業主導でプロジェクト進行していくスタイルが向いているでしょう。

検討されるさまざまな資金や収益

スマートシティ化は非常に大きなプロジェクトなので、開発には巨額の費用がかかります。さらには、街の運用がはじまる初期段階には利用者がマネタイズできるほどのボリュームが集まらずに資金繰りに苦労することも考えられます。

サービス利用者からの料金徴収以外の資金調達方法は、銀行からの借り入れや社債の発行、スマートシティに特化したファンドで資金を集める方法も考えられます。

トヨタ「Woven City」では、発明家にも一定数住んでもらい、社会課題の解決や街の発展に貢献してもらうことを検討しています。そこから期待される点として、企業側は発明家に対して出資や共同開発をすることで資金面を援助、そこで実現されたアイデアに対する特許など権利金の一部を企業の収益にできます。さらに、発明したアイデアの利用権を他の地域へ展開することで収益を得ることも中長期では期待できる効果になるでしょう。

住民目線の開発からマネタイズが生まれる

スマートシティ化が進められていられる背景には、Society 5.0で提唱された”世界に先駆けた「超スマート社会」の実現”があります。「超スマート社会」は、エネルギー、交通、製造など複数の異なるシステムを連携させます。ロボットやAIとの共生など、システムをより高度化することで、誰も取り残さない豊かな社会を日本が将来的に目指していく世界観になります。

この社会を実現していくためには、新しいテクノロジーの実証を繰り返しながら実装を模索していく必要があります。スマートシティ化が先端技術の実証実験だけの場にならないように、すべての住民が快適に暮らせる街づくりを目指すことが大切です。

テクノロジーやサービスをどのように提供すれば住民が豊かになるのかという視点を持ち続ける必要があります。また、利用者が望み、使い続けられるサービスを創出していくことで、結果的に価値の高い環境を生み出していけるでしょう。

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