スマートシティを支える法案について

最終更新日:2021年01月03日

スマートシティを目指すには、今までの法律の枠組みでは実現が難しいプロジェクトがいくつか存在していました。それを解決してスマートシティを実現してくために、2020年5月27日に「国家戦略特別区域法の一部を改正する法律」が成立されました。

この法律改正によって何ができるようになったのか説明します。

スマートシティを目指す流れ

2015年に国連サミットで掲げられたSDGsの世界的な目標が掲げられました。 17の世界的な目標の[9:産業と技術革新の基盤を作ろう]と[11:住み続けられるまちづくりを]を受けて日本では、2016年に第5期科学技術基本計画を打ち出し、この中でsociety5.0が提唱されました。

society5.0が目指すのは、ICT、AI、IoT、ビッグデータなどの先端技術によってサイバー空間とフィジカル空間(現実世界)の融合を実現する世界に先駆けた「超スマート社会」です。

ロボットやAIによって日常生活のサポートやビッグデータによる情報のサジェストなど、先進のテクノロジーを使って誰も取り残さない持続可能な社会を実現しようと計画が進められることになりました。

スマートシティとスーパーシティの違いは?

スマートシティとは、最先端技術を使って都市の一部機能に関する実証実験を実施している都市で、スーパーシティとは都市そのものを高度化した未来都市のことを指します。

どちらかといえば、スマートシティは企業やエンジニアが新技術を試してナレッジ(知識)やデータの収集、検証が可能な実験都市で、スーパーシティは先端技術を複合的に使ってさまざまな都市機能がハイテク化された都市のことを呼びます。

国内では、2000年初頭に政府が省エネや経済発展を目指す都市計画として打ち出した方針がスマートシティでしたが、近年ではスーパーシティ構想として国家的にプロジェクトが進められています。

スマートシティを実現するための法案

日本でスマートシティを実現していくためには、いくつかの法規制を緩和しなければなりませんでした。2020年5月27日に「国家戦略特別区域法の一部を改正する法律」が成立され、国内でスーパーシティ構想を進めていくための法的な点はクリアされました。

この改正案の概要は以下の通りです。

①データ連携基盤の整備促進 複数の主体からデータを収集・整理し、AIやビッグデータを積極的に活用した先端的なサービスの開発・実現を支えるデータ連携基盤の整備事業を法定化。国が定めた安全基準等を守ることを前提に、同事業の実施主体が国、自治体等に対し、その保有するデータの提供を求めることができることとする。

②データ連携基盤を活用した複数の先端的なサービスの同時実現 スーパーシティを支える様々な先端的サービス事業と、その実現に不可欠となる複数分野の規制改革を、同時かつ一体的に実現することができるよう、以下の特別な手続を整備する。

・スーパーシティの事業計画を、住民その他の利害関係者の意向を踏まえつつ、案の段階で、必要な規制の特例措置の求めとともに、内閣総理大臣に提出することができ、その内容は、各省調整に先立ち区域計画案として公表される。 ※省令で定めるところにより、住民その他の利害関係者の合意を証する書面や、必要に応じ条例による規制改革の案等を添付。

・内閣総理大臣は、各規制所管大臣に対し、特例措置の検討を要請。各規制所管大臣は、その可否について、必ず国家戦略特区諮問会議の意見を聴いた上で、遅滞なく通知・公表する。

・諮問会議は、必要に応じ、規制所管大臣に勧告を行うことができ、その内容は公表される。

引用:国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律案 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/kettei/pdf/r10607_sankou.pdf

この法案で実現したいことは、AIやビッグデータを活用したサービス開発ができるように都市をOSとしたデータ連携基盤を整備、特別区域内での規制の特例措置、ICTやAIなどの先端技術を用いて「まるごと未来都市」を作ることです。

この法案の成立によって実現が可能になったことをみていきましょう。

遠隔自動運転

特別区域内において、道路の自動運転やそれに関連する電波利用が想定されており、法案によって道路運送車両法・道路交通法の特例を認めています。

無人航空機

特別区域内において、ドローンの使用許可に関する特例を認めます。ドローンは航空法の範疇になり、飛行区域の許可や飛行方法の承認および電波利用についての特例が認められます。

スマートシティはどこにできる?

スマートシティは、改正法案によって規制の特例措置が適用されるスーパーシティ型国家戦略特別区域に開発が進められていきます。

スーパーシティ型国家戦略特別区域は、スマートシティを実現できるために国や自治体、事業者の官民が共同で開発・実証実験ができる特別区域です。この地域内では、先端技術を用いた技術の実証実験を複数の分野で実施していくことができます。

特別区域となれる場所は、希望する地方公共団体に公募を募り国が選定をしていきます。

参照:スーパーシティ型国家戦略特別区域の指定に関する公募についてhttps://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/supercity/supercity_sckoubo.html

改正法案の懸念

未来の都市づくりに向けて積極的な法改正が行われた「国家戦略特別区域法の一部を改正する法律」ですが、法案成立を急ぎすぎたのではないかといった声もあがっており、実際運用していくうえでは課題もみえてきています。

改正法案において懸念されている点をみていきましょう。

住民の合意が得られるのか

スーパーシティが目指す社会は、特別区域内で事業を営む企業や在住する住民の情報をデータ連携基盤である都市OSに集約し、各サービスの共有データとして利用していきます。

スーパーシティ構想を実現するためには、計画段階で住民や利害関係者の合意を証する書面の提出をもとに規制改革などを実施しサービス開発を進めていく必要があるのですが、企業や住民がパーソナル(個人情報)に近い情報の提供に合意を得ることができるのかは未知数です。

特別区域に指定する自治体は、人口増加や国による金銭的援助、企業誘致なども見込めるため、特別区域の立候補には積極的になりますが、スーパーシティを実現するためには住民全員の合意がなければシステムは完全ではありません。

どのように住民合意を得ていくかはこれからの課題になっています。

個人情報の取り扱いについて

改正法案において、スーパーシティ構想の実現に向けた規制緩和ができるようになっています。個人情報データを都市OSに集約できる点も緩和できてしまい、個人情報保護の観点から、プライバシーの侵害や個人情報の漏えい、不正利用につながる恐れを心配されています。

医療や介護に必要な有益な情報や利便性向上には、個人情報がデータ連携されていることが必要です。しかし、データ連携基盤による健康状態の数値化や病気予測は、不公平な扱いや差別を生む可能性も指摘されています。

現実味を帯びてきたスマートシティ

改正法の成立によって、スマートシティはいよいよ現実味を帯びてきました。当面は特別区域に限られますが、地域活性化、過疎化解消などの社会課題の解消が期待できる持続可能な地区が誕生します。まだ計画の段階や開発が着手したばかりの街が大半なので、生活に実感が得られるようになるのは、もう少し時間がかかります。

スマートシティ実現に向けての個人や企業が取り組めることを検討していきましょう。

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