クラウドAIとエッジAIの違い

最終更新日:2021年02月06日

クラウドAIとエッジAI

近年、クラウドAIと共にエッジAIという言葉を耳にするようになりました。この2つのAIの言葉の意味と違いについて、ここで説明していきます。

クラウド(クラウドコンピューティング)とは何か

クラウドAIの説明の前に、まず、クラウドコンピューティングについて説明します。クラウドとは、「クラウドコンピューティング」の略です。以前は、「クラウドではないコンピューティング」でした。この2つの違いについて見ていきましょう。

クラウドではないコンピューティング

「クラウドではないコンピューティング」とは、自分のコンピューターの中にアプリケーションがインストールされている状態のことです。これをオンプレミスと呼びます。

クラウドコンピューティング

「クラウドコンピューティング」では、アプリケーションがインストールされていなくても、インターネットにつながっていれば、インターネットを利用したサービスが受けられます。インターネットを通じたクラウドのサービスとして分かりやすいのは、WEBメールでしょう。

Gmailは特別なメールソフトを使わずに、インターネットにつなげることができるパソコン、スマートフォン、タブレットなどがあれば、Gmailのサイトにアクセスし、ユーザーIDとパスワードでログインして、どこからでもメール閲覧も送受信もできます。データは自分のパソコンではなくクラウド上にあります。

このようにインターネットにつながっていることでサービスが受けられることなどを「クラウド」といいます。この場合、データやアプリケーションはクラウド上にあるのです。携帯電話回線の高速化と、Wi-Fi技術などの向上によって、インターネットの回線速度が上がったことでクラウドコンピューティングが普及してきました。

クラウドコンピューティングの種類

クラウドコンピューティングは、提供するサービスの種類によっておおよそ3つに分類されます。それが、SaaS、PaaS、IaaSです。この3つについて簡単に説明します。  

SaaS

SaaS(Software as a Service)は「サービスとしてのソフトウェア」と日本語で訳されます。インターネット経由でソフトウェアが提供され、ユーザーが使用できるサービスです。

PaaS

PaaS(Platform as a Service)は「サービスとしてのプラットフォーム」と日本語で訳されます。PaaSはクラウドを通じて、サーバーやOSなど、システムを構築するためのプラットフォームを提供するサービスです。提供されたプラットフォームで、利用者は自分たちが必要なソフトウェアの開発などを行います。主にビジネスで利用されています。

IaaS

IaaS(Infrastructure as a Service)は、「サービスとしてのインフラ」と日本語で訳されます。HaaS(Hardware as a Service)「サービスとしてのハードウェア」と呼ばれることもあります。インターネット経由で仮想のネットワーク機器やサーバーなどのハードウェア部分を提供するサービスのことです。

プライベートクラウドとパブリッククラウド

上記3つの他に、提供先の環境によってプライベートクラウドとパブリッククラウドという分け方もありますので、簡単に2つについて説明します。

プライベートクラウド

プライベートクラウドとは、大企業などにおいて自社の社員が利用するためだけに構築したクラウドコンピューティング環境のことです。

パブリッククラウド

パブリッククラウドとは、インターネット経由で誰でも利用できるクラウドコンピューティング環境のことです。

クラウドAIとは何か

クラウドAIとは、AI技術の処理をクラウドコンピューティングで行うことです。

クラウドAIは、自社内などのサーバーではなく、外部のデータセンターなどクラウド環境にAIが組み込まれています。クラウド上のデータセンターは、CPUやGPUのマシンパワーが高いため、エッジAIよりも複雑で高度な処理ができます。

クラウドAIは、ネットワークを通じてクラウド環境のデータセンターに大量の学習データを蓄積します。そして、センター内のマシンで高速に処理を行って、機械学習モデルを効率的に作成します(機械学習モデルとは、答えを出すための関数のようなもの)。大量の学習データを高速で処理したいケースに適しています。

Amazon、Microsoft、Googleの主要3社が提供しているクラウドサービスをまとめて「3大クラウド」と言います。Amazonが提供するAWS(Amazon Web Services)、MicrosoftのAzure(Microsoft Azure)、GoogleのGCP(Google Cloud Platform)の3つが世界的シェアを占めています。

エッジAIとは

エッジAIとは、エッジ(端)、つまり、末端となる端末機器や無線基地局などに搭載されているAIを意味します。エッジを具体的に言うと、スマートフォンやスマートスピーカー、産業用のロボットなど、何らかのシステム系の端にある機器(端末)です。

エッジAIとは、IoTでつながった各電化製品にAIを搭載し、端末側で情報処理を行う技術のことです。

エッジAIには2つのタイプがあります。一つは、リアルタイムの処理はAI側で処理を行い、大量の学習データを扱う場合に処理速度が速いクラウドAIを使うタイプです。

もう一つは、クラウド環境を使わず、エッジ端末だけで機械学習を行うスタンドアロンタイプです。産業用の機械や自動運転の車などのリアルタイムで対応を求められるものは、通信障害があった場合などを考慮し、即時対応できるタイプのエッジAIが使われています。

エッジAIの成長

株式会社富士キメラ総研が発表した、2020/10/12発表 第20107号のプレスリリース※によると、2020年度の日本市場の見込みが177億円で、2025年の予測が565億円とされています。

※ 参考 株式会社富士キメラ総研 2020/10/12発表 第20107号 「プレスリリース 『2020 人工知能ビジネス総調査』まとまる」

エッジAIが注目される理由

これほどエッジAIが注目されているのはなぜでしょうか。ここではエッジAIがなぜ注目されているのか、そのメリットについて説明をしていきます。

リアルタイム

クラウドAIでは、インターネットにつながったクラウド上のデータセンターでの処理が必要になります。そのため、万が一インターネットの通信障害が起きた場合、即座に対処ができません。しかし、エッジAIは、端末側で処理を行うため、通信障害による遅延がなく、即座に処理ができます。

人間の命に関わるような自動運転の車や産業用の機械などは、クラウド上にあるAIでは対応が間に合わず、大事故につながる可能性があります。そのため、エッジAIが必要なのです。

セキュリティー

クラウドAIでは、インターネットを通じてクラウド上のデータセンターに情報を送り、処理を行うため、個人情報の漏洩などの可能性があります。しかし、エッジAIは端末で処理を行うため、情報漏洩のリスクを軽減することができます。

通信量とコストの削減

エッジAIが普及した理由には、コストが安いということも挙げられます。これまで、AI開発は高価な機器がある環境で多くの人材が必要だったため莫大な費用が掛かっていました。そのため実用化されないままに終わることも多かったのです。

しかし、近年AI開発が進み、無料、もしくは安価でエッジAIを開発できるようになりました。

また、エッジAIは端末側で推論ができ、全データをクラウド上に送信する必要がありません。そのため、データ量が軽減され、通信量が減ることで通信費用も軽減できるのです。

例えば、防犯カメラの映像を常時クラウドに送り続けるのは多くのコストが必要になります。しかし、エッジAIカメラで異常を検知した時のみクラウドに送るようにすることで、コストを抑えることができるのです。

まとめ

エッジAIは、まだまだ発展途上で、今後さらに増加すると見込まれている分野です。エッジAIとクラウドAIの両者の利点を生かしてAI技術が発展していくことが期待されています。




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