AR(拡張現実)の意味とその活用法とは
最終更新日:2021年02月07日
ARは「Augmented Reality」の略称で、日本語では“拡張現実”と呼ばれています。実在する環境(現実世界)にバーチャルな視覚情報を加えて表示することで、目の前の現実世界を、言葉通りに拡張させていきます。
AR(拡張現実)の浸透
“仮想現実”という意味の「Virtual Reality」という言葉は1990年代から一般的にも知られるようになっていました。コンピュータや映像表示デバイス、電子制御と組み合わせることで、まるで現実かのような仮想空間に入り込んだような感覚を味わえることが特徴となっています。
その世界の中に入り込んで楽しむVirtual Reality(VR)と違って、ARは現実世界と言わば“地続き”のような世界を楽しめる技術と言えます。VRのようにゴーグルなどを必須とせず、スマートフォンがあれば利用できるものが多いので、より身近な技術だと言えるでしょう。
その”AR“という言葉と機能を一般的に広めたのは2016年にリリースされたスマホ用ゲームアプリ「ポケモンGO」でした。スマホやタブレットなどの端末を使って、屋外でポケモンを捕獲するゲームですが、「ARモード」が搭載されていて、現実世界の中でポケモンが本当に目の前にいるように感じることができます。このアプリが世界的な大ヒットとなったことと、顔を認識させてさまざまなエフェクトをリアルタイムで画面上に表示させて撮影することができるアプリ「SNOW」も、多くの人が利用し、ARの効果や楽しさ、魅力を広く拡散しました。
テーマパークにもARが
人気テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」が、2021年3月18日に新エリア「スーパー・ニンテンドー・ワールド™」を開業します。「スーパーマリオ」シリーズなど、任天堂のゲームの世界を再現したエリアで、ライド・アクション「マリオカート 〜クッパの挑戦状〜」では、ARをはじめ、プロジェクションマッピングなどの映像技術とスチームによる特殊効果を用いて、舞台セットとしてコース上に再現された歴代ゲームの名シーンを組み合わせて、現実世界に「マリオカート」の世界を再現するアトラクションです。
プレースホルダ社の屋内型テーマパーク「リトルプラネット」もARを取り入れていることで注目されています。アナログな遊びにARを組み合わせていることが最大の特徴で、アトラクションの一つ「PAPER RIKISHI」は、力士の塗り絵に色を塗った後、設置してあるカメラでスキャンして映像に取り込み、その力士を闘わせる“デジタル紙相撲”。塗る色によって力士の能力、例えば、スピードや体力、強さなどが変化する仕組みになっています。
カーレースが楽しめる「SKETCH RACING」も、同じように紙に色を塗って、スキャンしたもので遊ぶアトラクション。ARを使うため、アトラクションの変更も簡単にできて、費用も掛かりません。アトラクションのアップデートもすぐにできるのでリピーターも呼び込みやすくなります。今後、テーマパークのアトラクションにARが活用されることも多くなることが予想できます。
日常生活におけるARの活用
ゲームアプリといったエンターテインメント関連以外にもARは活用されています。まずは身近なところから。ショッピングにおいて、ヨーロッパ発祥の家具量販店の「IKEA(イケア)」では、2017年にAR技術を用いたアプリ「IKEA Place」を導入しました。
タンス、テーブル、ソファをはじめ、特に大型家具を購入する時に重要となるのが寸法です。気に入った家具が見付かったけれど、家の中の置きたい場所に収まるかが不安という人も多いのではないでしょうか。このアプリを使うと、カタログに掲載されている商品をタップしてスマホでかざすだけで、その場所に置いた時のフィット感を確かめることができます。カタログには試せる商品が約2000点もあるので、実店舗に行って探して寸法を確かめるよりも効率的に見付けることができます。2019年にはアプリのインターフェイスを一新して、複数の家具を設置した様子や部屋全体をコーディネートしてくれる「部屋セット(Room Sets)」機能が追加されています。
あると便利なAR
普段の生活の中で“あると便利だな”と思うAR技術を使ったアプリもあります。「Google翻訳」の中の機能の一つである「Word Lens(ワード・レンズ)」は、翻訳したい文字列にスマートフォンのカメラをかざすと、訳された文字がリアルタイムでスマートフォンの画面に重ねて映し出されます。画面内の同じ色をひとかたまりとして文字認識して、学習した辞書データと読み合わせて単語を表示するという仕組みになっています。単語レベルでの翻訳がメインとなっているので、文章の翻訳に関していうとそれほど精度は高くありませんが、大意を理解するというレベルであれば使い勝手も良く、重宝するアプリと言えます。
スマートフォンのカメラをかざして使うということでは、「星座表」も1400万人以上の人がダウンロードしている人気のアプリです。夜空の星座を正確に教えてくれるアプリで、タップすれば星の名前も表示されます。
地域の活性化にもARを活用
観光地のイベントやお祭りなどの告知ポスターやフライヤーにARを使うところも多くなりました。そのポスターなどにARマーカーを設置して、動画で過去のイベントの様子などを伝えることで文字や写真だけでは伝えられない情報を発信。外国語版を配信することでより多くの人が活用できます。
お祭りなどに限らず、普段でも“観光”のために使うことが可能です。実際の風景や建造物にARマーカー(マーカーレスを含む)を設置することで、観光案内(ガイド)の役割も果たすことができます。
また、九州旅客鉄道株式会社(JR九州)はNTTドコモと、「列車の窓」を新たな情報表示プラットフォームとして活用する新体感の列車内観光サービスを始めました。風景に合わせた観光情報をAR技術などによって車窓へリアルタムに表示し、指先(タッチ)や声での操作によってインタラクティブに情報を提供してくれます。目的地に移動する途中で観光の準備ができるというのは旅行者にとってうれしい機能と言えます。
医療の分野で積極的に活用されるAR
AR技術によって、大きく進化・進歩している分野といえば“医療”です。Microsystems社の「GLOW800」という医療用デバイスが手術で使われていて、AR技術によって、患者の器官の様子を可視化して、脳血管手術の工程をサポートしてくれます。AR蛍光システムと医療用に用いられるシアニン色素・ICGを組み合わせることで、手術する部分に色を重ねて表示することができ、それによって術部を周囲の血管や器官と見分けやすくなります。難易度の高い手術もAR技術によって成功率を上げることができます。
AR技術を使えば、遠隔医療も可能になります。手術でその分野のスペシャリストの助けが必要な場合に、その専門医がオペ室にいなくても、執刀医が患部にモニターを近付け、その画面を共有することができ、患者の術部に切開するラインを指示して、そのラインに沿って切開するという、まるで隣にいるかのような連携も可能となります。
その他にも、電子聴診器とスマートグラスを使って、遠隔診察もできます。在宅患者のもとへ看護師が訪れ、看護師がスマートグラスを着用して電子聴診器で患者を聴診。そうすると、遠方の医師がカメラから転送された映像をパソコンなどのモニターで確認して、心音や呼吸音をヘッドフォンで聴いて確認。こういう技術は医師不足の現在において、かなり有効になってきます。
エンタメ、日常(ショッピングなど)、医療など、各分野での活用が急速に増えているAR(拡張現実)。今後数年でより身近な存在になっていくのは間違いないでしょう。
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