AR(拡張現実)の技術的な仕組みについて

最終更新日:2021年02月07日

ARは「Augmented Reality」の略称で、日本語では「拡張現実」と訳されます。実在する環境にバーチャルな視覚情報を重ねて表示することで、文字通り、目の前の現実世界を拡張させていきます。通常の視覚だけでは感知できない情報をプラスしたもので、主にスマートフォン向けのサービスとして普及・拡大しています。2016年にリリースされ、世界的なヒットとなったゲームアプリ「ポケモンGO」でも使われた技術といえば、ピンと来る人も多いのではないでしょうか。

AR(拡張現実)のために必要な“情報”

現実世界に文字や画像などを重ねるARアプリは年々普及していますが、ARを用いて実在の空間に画像などを違和感なく重ねるためには精密な位置確認(周囲環境)が必要となります。

そしてもう一つは「現在位置」。今はもうサービスが終了していますが、2009年にリリースされた「セカイカメラ」というARアプリがありました。世の中の全てのものに“タグ”を付けて、関連性のあるものを結び付けてしまおうというコンセプトで、例えば街中でスマートフォンのカメラをかざせば、スマホ内蔵のGPSと電子コンパスを使い、現在位置とスマホのカメラの向きを認識して、その方向に貼り付けられた“エアタグ”を画面上に重ねて表示するというものでした。

ARの仕組みは大きく分けて2タイプ

ARの仕組みは大きく分けて「ロケーションベース型」と「ビジョンベース型」の2つのタイプがあります。

「ロケーションベース型」は、GPSなどで取得した位置情報に紐付けて、情報を表示します。また、GPSの位置情報に加えて、加速度センサーで端末の向きを測定したり、磁気センサーで傾きの情報を取得したりすることによって、より精密に画面上のどの位置に情報を提示するかを決定しています。

「ビジョンベース型」は、“画像認識型”とも呼ばれています。画像認識や空間認識に関する技術を利用することで、目の前の環境を解析して、情報の提示を行うというのが特徴となっています。よく見掛けるようになりましたが、正方形などのARマーカーをスマートフォンなどの端末のカメラに認識させて情報を表示させるマーカー型のARが「ビジョンベース型」ARの一般的な例と言えるでしょう。また、特定のARマーカーを使わず、実際の空間に存在する事物や建造物、さらには自然環境そのものを認識して情報を表示させるマーカーレス型というものも増えてきています。

「ビジョンベース型」ARの仕組み

まずは「ビジョンベース型」の“マーカー型”と“マーカーレス型”の仕組みについて解説します。

マーカー型ARは、マーカーと呼ばれる決まった形の図形を端末のカメラに認識させることで情報を表示させることができます。マーカーとなる図形は正方形で、黒い枠線で囲まれています。黒枠でマーカーの検出を行い、枠の内側にある図柄のパターンによって判別を行います。マーカーのデザインをするにあたって注意するべき点は、点対称の図形にしないこと。点対称の図形はマーカーの向きが正しく認識されない可能性が高いからです。

そして、マーカーレス型ARは、現在撮影している実際の空間にある窓や机などの角といった“コーナー点”や特徴点をマーカー型ARの特徴点の代わりに用いて、その地形などに合った付加情報を表示します。マーカー型と違い、マーカーレス型ではリアルタイムでの解析とマッピングが必要となるため、計算量の多さや計算コストの高さのため、実用性は低いと言われていました。しかし、PTAM(Parallel Tracking and Mapping)、SmartARといったマーカーレス型の手法の確立によって、普及していくようになったのです。

ちなみに、“PTAM”は「Parallel Tarcking And Mapping」の略称で、動画の中における特徴点の追跡(Tracking)と3D空間へのマッピングを指す手法のこと。“SmartAR”は、ソニーの物体認識技術と3D空間認識技術を統合することによって生まれたマーカーレス型ARの手法のことです。高速のトラッキングに優れていて、独自に開発された高性能な画像処理エンジンによってモバイル環境でも快適な動作が可能となりました。

マーカー型の利点としては、マーカーを設置した場所に正確に情報を表示することが可能になること。ただし、マーカーを紙に印刷するなど、用意が必要になってきます。マーカーレス型のメリットは、マーカーを用意しなくても、現実の建造物や風景に付加情報を表示できる点です。先ほども述べたように、計算量が多く、マーカー型と比べると安定性と精度が低いことは今後の課題となっています。それと、制作経験がない人にとっては難易度が高いなど、技術面でのハードルの高さもあります。

「ロケーションベース型」ARの仕組み

「ロケーションベース型」ARの仕組みは、主にGPSから取得した位置情報に関連した画像や文字などの付加情報を表示します。GPS型のARアプリの開発は、位置情報に加えて、デバイスの傾きや方位を端末の磁気センサー、加速度センサーを用いて検知し、3D空間の中のターゲットを認識して表示したい場所に付加情報を表示します。

このタイプの利点は、位置情報や方位、傾きなどの必要な情報が現行のデバイス・端末で比較的簡単に取得できるという点。特殊なライブラリなどがなくても基本的には実現が可能となっています。

課題点として挙げるとすれば、情報源をGPSに頼っている部分が多いため、情報を表示する位置の精度が低いと多少のズレが生じる可能性があるところです。ただ、端末も日々進化しているので、GPSプロセッサーの性能が急速に向上していたりするので、補正情報を付加してあげることで誤差を少なくすることができるようになりました。

2つのタイプのARの上手な使い方

ロケーションベース型とビジョンベース型の2つのタイプにはそれぞれ長所と短所があります。ロケーションベース型は、位置情報をベースにしていることもあって、ナビゲーションサービス、観光情報サービス、位置情報を使ったゲームアプリとの相性が良いと言えるでしょう。マーカーが必要ないので、屋外での利用が簡単。暗い所でも動作の安定性が高いので、昼夜問わずコンテンツを提供することができます。マーカーが不要ということは、景観を損なうこともありませんし、商品など対象物のデザインを邪魔することもありません。短所は先ほども触れましたが、GPSの精度によって誤差が生じることです。

一方、ビジョンベース型は、画像認識技術を使うということで、商品のロゴやパッケージ、広告などにAR技術を用いて訴求効果を高めることに向いています。こちらはマーカーを設置することによって必要な位置に正確に付加情報を提示できるというのが最大の長所。位置情報を必要としないので、電波の悪いところでも安心して使えます。それと、作成する難易度が高くないので、初心者でも始めやすいというのも長所と言えるでしょう。

短所を挙げるとすると、マーカーの見えづらい場所、例えば暗い場所などで動作が不安定になることでしょうか。

どういう目的で使うのか、どういう場所で使うのか、といった悩みもそれぞれの特徴を知っておけば、より精度が高く、実用性のあるARを活用することできます。