ドローン活用が農業・林業・水産業を救う

最終更新日:2021年02月05日

農林水産省がドローンを活用したスマート農業を後押し

農林水産省はスマート農業を推進し、農業用ドローンの普及拡大に向けた取り組みを行なって、農業現場でのドローン活用を積極的に進めています。

農業用ドローンの普及拡大に向けた官民協議会のページは情報量が多く、補助金制度や、ドローンによる農薬散布に適した農薬の情報など、ドローン導入を考えている農業従事者に向けて有用な情報を発信しています。

※農林水産省 農業用ドローンの普及拡大に向けた官民協議会

農業におけるドローン活用の始まり

1980年代に日本で世界初の産業用無人ヘリコプターが発売され、農薬散布に活用されてきました。その後もドローンは農業に有効活用されています。農業で実用化、及び、期待されている主なドローンの活用方法は以下のようなものです。

撒く

農業用ドローンが一番多く使われるのは農薬散布です。以前は夏の暑い時期でも農薬散布機を背負って農薬を撒いていました。害虫が発生しやすいのは夏ですから、暑い上に大変な重労働で、農業従事者の作業の中でも過酷な作業だったのです。

人力では、大体1ヘクタールの田んぼに農薬散布を行うのに1時間程度掛かると言われています。しかしドローンを使うと、10分前後で同じ作業を行うことも可能です。1時間で6倍の作業効率が見込め、重い農薬散布機を背負うこともなく、楽に作業が進められます。

また、日本の農地は起伏のある山間部にも多く存在し、小さな田畑も多いため、小回りの効くドローンが大活躍します。ドローンで散布できる農薬の開発も進み、米だけではない作物にもドローンで散布できる農薬の種類も増えてきました。また、センシング技術を活用して、弱っている部分にだけ農薬を散布することも行われ、より効率的で少ない作業や少ない農薬散布で効果を上げることも可能になります。

また、農薬だけではなく肥料もセンシング技術により必要な場所に必要な分だけ散布できるようになります。

蒔く・受粉する

まだ実証実験段階ですが、農産物を育てることにもドローンは活用されつつあります。 岩手ではドローンを活用した水稲の種まきの実証実験を行い、今までの作業時間の80%が削減されました。※1

また、青森の高校が秋田の企業と協力して、りんごと桜桃(さくらんぼ)の受粉をドローンで行う実証実験を行いました。 りんごは同じ品種の花粉がめしべについても結実しません。そのため、花が乾いている晴れた日にダチョウの羽などを使い、一つ一つ受粉作業を行います。高い枝に実るりんごの受粉は大変な重労働でしたが、ドローンを使い特別な溶液に花粉を入れて散布することで、りんごは、手作業で145分掛かっていたものが、ドローンでは10分で作業が終了、桜桃(さくらんぼ)は同じく45分掛かっていたものが、3分に短縮されたのです。※2

※1農林水産省 農業分野におけるドローン活⽤の事例
※2東北地域農林水産・食品ハイテク研究会 東北ハイテクセミナー「秋田県におけるスマート農業取り組みの現状」講演資料 農業用ドローンを活用したリンゴの溶液受粉の研究

ドローンと精密農業

ドローン空撮は農業にも生かされています。ドローンを使って農地全体を空撮し、画像分析をして、生育状況や病虫害の状況などを調べることなどに使用します。

カメラを搭載したドローンで圃場(ほじょう、農作物を栽培するための場所)を空撮し、画像の分析を行うことによって、農作物の生育状況や、病害虫の発生箇所などの「見える化」を行うことを精密農業と言います。

そのためにリモートセンシングという技術が使われます。リモートセンシングとは、「地球観測衛星等のように遠く離れたところから、対象物に直接触れずに対象物の大きさ、形及び性質を観測する技術」※のことです。リモートセンシングは人工衛星によって行われるため費用もかかることから、主に海外の大規模農場で行われてきました。

しかし、ドローンの空撮技術を活用することで、これまでと比べて大変容易で安価に情報を取得できるようになりました。農場全体をドローンで空撮し、適切でポイントを絞った害虫駆除や病害対策、肥料を無駄なく必要なところに使う、どの時期に収穫するか、どのくらい収穫量があるかなど、全過程の効率化が期待できます。

※引用 JAXA リモートセンシングとは 宇宙からの地球観測
※農林水産省 農業分野におけるドローン活用の事例

運ぶ

収穫したものを運ぶこと、農作業に使う道具を運ぶことにもドローンが活躍します。日本は起伏に富んだ地形のため、山間地にも圃場が多くあります。そのような場所に荷物を自律飛行で届けることも可能です。

また、収穫の際にもドローンを役立てる研究が進められています。特に高い樹木に成る果実を人の手で収穫するのは重労働で危険を伴います。これを解決するのがセンサーとアームが付いたドローンです。

このドローンが高いところにある果樹の熟し加減を感知し、収穫にふさわしいものだけを選びとって、収穫し、カゴに入れるまでの作業をしてくれるようになるのです。高いところや枝の裏など、取りにくいところの果樹を収穫してくれますから、取りこぼしなく収穫量を上げ、労働力も軽減することができます。

※参照 ドローンジャーナル クボタ、ドローンによる果樹収穫サービスを行うイスラエル企業に出資

守る

鳥獣害による作物の被害を減らすためにもドローンが使われています。日中にドローンの走行経路を設定し、鳥獣が活動する夜間に赤外線サーモカメラを搭載したドローンで空撮を行い、動画を解析し、罠を効率よく仕掛けます。※1

いのししなどの害獣がドローンの飛ぶ音を嫌うため追い払いの実証実験も行われています。 ※2

※1 農林水産省 農業分野におけるドローン活用の事例 鳥獣被害対策における赤外線サーモカメラを用いた生息実態把握
※2 農林水産省 技術(機械)名:ドローンによる害獣追い払い

規制見直しによるドローン農業活用の展望

農林水産省は、深刻な人手不足の解決策としてドローンの農業活用を推進してきました。 しかし、なかなかドローンは普及しませんでした。それは、農薬散布用のドローンは、一般的なドローン飛行の規制に加えて、「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」という規制もあることが一因となっていました。

そこで、2019年7月に「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」が廃止されるなどの規制緩和が行われました。この規制緩和では、「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」が廃止され、新たに令和元年7月 30 日付で「無人マルチローターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン」※ が制定されました。このガイドラインは 最終改正が、令和2年5月 18日付で行われています。

この規制緩和で、農薬散布オペレータードローンの専用免許が不要となり、指定業者による点検の定めもなくなりました。また、国交省の承認も一元化され、さまざまな手続きが簡略化されました。国や都道府県に農薬の散布計画を提出することも不要になりました(散布区域周辺への情報提供が前提)。

また、一定の条件を満たせば、今まで農薬散布を行う際に必要とされた補助者の配置も不要になりました。さらに、夜間や目視外(目に見える範囲以外)での操縦が可能になったため、夜間や目視外での農薬散布も行うことができるようになったのです。

夜間や目視外での農薬散布も行えるように、「無⼈航空機 飛行マニュアル」に即し、自動操縦による飛行で、飛行範囲の制限やトラブル時に危険回避機能が作動するよう設定して飛行させることで、夜間や目視外での農薬散布も行えるようになりました(夜間や目視外でのドローンの飛行には条件があります)。

※農林水産省 無人マルチローターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン
※国土交通省 無⼈航空機 飛行マニュアル

新3Kを目指して

今まで農業は「きつい、汚い、危険」の3K仕事の一つといわれてきました。しかし、ドローンやAI、センサーなどのIoTを活用するスマート農業に変化することで新しい3K「かっこいい、感動がある、稼げる」に変貌を遂げようとしています。