沖縄県内企業のRPA活用事例からみるRPAの真価 ― コロナ禍による非接触の働き方とデジタル化
最終更新日:2020年11月13日
2020年、コロナ禍により世界が一変しました。それは、沖縄も例外ではありません。
当特集は、「コロナ禍における働き方の変化」と、事務作業の効率化に貢献する注目のテクノロジー「RPA」に焦点を当て、実際にRPAをご活用されている沖縄県内企業様のリアルな声をお届け致します。
RPA導入からまもない企業様、RPAご活用3年目の企業様、当サイトを運営しておりますISCO、3社のRPA活用事例をご紹介して参ります。ぜひ最後までご覧ください。
【目次】
「株式会社プログレッシブエナジー」総務部管理課課長代理の儀間泰(ぎま・ゆたか)氏にお話を伺いました。<取材日:2020年10月28日>
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弊社は、現場での業務がメインのため在宅勤務は難しい状況ですが、緊急事態宣言発令時には社内外関係者等の打合せをオンライン会議で行うようにしました。
ー 非接触型の働き方でとくに気を付けていることがあれば教えてください。
基本的には3密を避ける、マスクをつける、手洗い消毒をするなど一般的に言われている事を徹底しています。
2019年12月からRPA導入のご検討を開始。2020年3月よりトライアル版RPAの試験導入を実施。作業時間の大幅な削減などの効果が得られたため、2020年9月からRPAを本格導入されました。
経営層には、RPAがどういったものか、実際にRPAが稼働しているところを見てもらうことが大切だと思います。
既にRPAを活用されている関連会社へ伺い、実際にRPAが稼働しているところを見学させて頂きながらお話を伺いました。その際に、RPAが動いている様子を撮影させていただき、その動画を経営層に見てもらいました。
また、無料や安価で試せるRPAソフトを試験的に導入することによって、RPAに対する社内イメージの共有を図りました。
ー RPA導入の決め手を教えてください。
トライアル版RPAを一定期間導入したところ、RPA導入費用と比較しても、作業時間の大幅な削減によるコスト低減が見込めるなど、十分に効果が得られるとわかったことが導入の決め手です。
ー RPAを導入するために行われたことを教えてください。
RPAは通常行っている定型業務をロボットが自動化してくれるというものです。
そのため、RPA導入プロジェクトのメンバーは、定型業務のある課から実際に日頃の業務を行っている人を出してもらい、RPA研修に参加し、RPAのシナリオ(RPAが実行する業務フロー)作成スキルを身につけて頂くという方法を取りました。RPA導入プロジェクトは5名で行い、その中にIT知識のあるメンバーは私含め2名でした。
RPA化が見込める業務を各課で洗い出し、各課並行でRPA化を行い、2週間に1度進捗状況を報告するという形で進めました。困ったことがあると意見を出し合うことで、互いのスキルを高め、視野を広げることが出来ると考えたからです。
ー RPAを使うためのITスキル、業務知識レベルはどの程度必要でしょうか?
RPA化するためには、実際に業務手順を理解していることが必要だと思います。
ITスキルがない人でも、ヒューマンリソシア様のRPA研修を受けたことで、RPAの動きはすぐに理解できました。
RPAのシナリオ作成は、簡単なシナリオであればITスキルに関係なく、一度研修を受講すれば作成可能です。
ー RPA導入時に業務の見直し等はされましたか?
RPA化を進める上で、業務の効率化が図れるよう手順の見直しなどは行いましたが、大きく業務を見直したということはありません。
ー RPAの導入はスムーズでしたか? 困った点、工夫した点などがあれば教えてください。
RPA化プロジェクトメンバーは、業務担当者にRPA化のスキルを身につけてもらい、その上でITスキルの高い者がサポートに入るという体制で導入プロジェクトを開始しました。
業務担当者とITスキル保持者が二人三脚の形をとることで、RPA化プロジェクトメンバー内で複雑な業務に対応したRPAシナリオを作成することが可能となりました。
また、前述の通り、ITスキルがない人でもヒューマンリソシア様のRPA研修を受けることで、簡単なシナリオであれば作成可能でした。
(注:ITスキル保持者ご不在の場合も、ヒューマンリソシア様で研修やオンサイトサポートをご提供されているため、複雑なシナリオの対応も可能です。)
困った点としては、RPA化プロジェクトメンバー以外の社員もプロジェクト定例会議に参加し、RPA化の参加を促したいと考えていましたが、コロナ禍により思うように定例会議へ参加出来なかったことですね。
ー RPA導入後に困ったことはありますか? その際はどのように解決されましたか?
トライアル版RPA導入から数えても、まだ8ヶ月程度なので具体的に困ったということはありませんが、RPA化したことにより業務手順がブラックボックス化しないようにすることが今後の課題になると思います。
新たな担当者が来た場合に、作業内容を把握せずに業務が完了してしまうということが考えられるため、どのような処理を行っているかを教える必要があると感じています。
例えば、関係省庁に毎月提出する報告資料の作成や、コスト削減効果は小さいのですが、お客さまへの定例報告メールをRPA化することで、メール送信ミスの防止を図っています。
RPA活用事例1.「ガス使用量把握業務」
天然ガス供給事業において、毎朝30分~50分ほど掛けて、お客様のガス使用状況を把握する業務があります。
具体的には、パソコンからクラウド上にあるシステムにログインして、各お客様のデータを取得するという単純な手作業での業務をRPA化しました。
RPA研修を受講した当該業務に精通している者が、1~2日でRPAシナリオを作成し、改修を重ね約2週間で運用可能な形になりました。
RPA活用事例2.「会計ソフトデータ入力業務」
経理業務おいて、会計ソフトへデータを入力する業務があるのですが、入力項目が細かく複雑で多岐に渡るため、経理経験者と慣れていない者との作業時間にかなりの差がありました。
そこで、経験を必要とする複雑な会計ソフトの入力フォーマットを、Excelで見やすくシンプルな形に整え、これまで会計ソフトへ入力していたデータを、Excelのフォーマットに入力するように変えました。
Excelに手入力したデータを、RPAがExcelから会計ソフトへコピー&ペーストを行う方式に変更したのです。
RPAを使って、「複雑な会計ソフト入力業務」を「シンプルなExcel入力業務」に置き換えることが出来たことで、経験が少ない者でも容易に行えるようになり、入力ミスが低減され、作業時間が大幅に削減できました。
(A)数値的に表せる変化
試算値ではあるのですが、現在、RPAを計画している業務を含めると年間で約1,500時間の作業時間削減を見込んでいます。
(B)数値には表せない変化
RPA化によって業務の効率化を考えるきっかけになっているのではと感じています。
弊社の場合、RPA専用パソコンを設置し、24時間RPAを稼働できる状況にしました。これまで人手が取られていた会計ソフトへの入力など、定型作業を夜間や他の作業中に、RPAを稼働させることで作業時間を大幅に減らすことが出来ています。
弊社は幾つかのRPAを試してみて、直感的にわかりやすく、沖縄で研修制度が整っているRPAを選びました。
まずは、安価なトライアル版RPAを簡単な業務に導入してみることで、自社でRPA化した際の効果が体感出来ると思います。
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「全保連株式会社」カスタマーセンターのBM推進課長 名波祐太郎(なは・ゆうたろう)氏、新田未来(にった・みく)氏のおふたりからお話を伺いました。<取材日:2020年10月21日>
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2020年3月以降コロナの影響でテレワークはマストとなっており、弊社も在宅勤務を取り入れ、推奨しています。
以前はFAXや外線電話の問題がありましたが、現在はペーパレス化やWeb電話などを使ってテレワークでの対応も可能となりました。
コロナ禍以前より、お客様の満足度アップのために、CRMという顧客管理システムをCTI(*)に組み合わせて、通話中の顧客情報の確認やリアルタイムでの情報更新を可能にしておりましたので、テレワークへの移行はスムーズでした。
テレワークに変わっても業務内容は同じで、RPAもリモート操作で行っています。環境さえ整えばテレワーク・在宅勤務も可能なのです。(名波氏)
(*)CTI(Computer Telephony Integration)とは、コンピューターと電話を統合したシステムのことです。
ー 非接触型の働き方でとくに気を付けていることがあれば教えてください。
テレワークが増え、各々ひとりで仕事をしている状態になっていますので、社員ひとり一人のメンタル・ケアに一番気を遣っています。一体感醸成、情報共有のために、テレワーク朝礼はWeb会議ツールのZoomで意識的に行っています。また、テレワークとなると対応が難しい案件をひとりで受ける場面もありますので、わたしは常にZoomに入れる状態にしており、いつでも社員が気軽に相談できる体制にしています。(名波氏)
以前からお付き合いのあるヒューマンリソシア様が実践を踏まえたRPA研修をご提供されていたこと、本格導入の前に先行して一部業務で1年間のRPA評価期間を設けたことが大きかったですね。
RPAに掛かったコスト以上にコストカットができる目処のある業務がありましたので、もとは取れるという試算があったこともあり、上層部の決断も早かったと思います。(名波氏)
ー RPAを導入するために行われたことを教えてください。
カスタマーセンターの2名が沖縄で研修を受けました。RPAがどういったものか、という理解は半日でできました。
研修ではRPAの動かし方を学びます。例えば、ExcelでAという項目を別のExcelファイルにコピーする作業を実践してみるなどです。やっていくうちに疑問や課題が生じますので、その際は補習で対応していただきました。(新田氏)
ー RPAを使うためのITスキル、業務知識レベルはどの程度必要でしょうか?
通常業務の流れを理解していれば大丈夫です。タイピングもままならない、マクロを知らない、といった一般的なITレベルの人で問題ありません。(名波氏)
RPAは、実際に触れてみて、試行錯誤しつつ、徐々に理解が深まりました。わかりやすいイラストのアイコンで直感的に操作ができ、パズルをしているイメージです。慣れてくると、「これをやってみよう」、「次はあれをやってみよう」といろいろとRPAに覚えてもらいます。育成ゲームみたいな感覚ですね。使っているうちにRPAに愛着がわき、止まると「今日はどうしたの?」と思うほどRPAがかわいく思えます。RPAに慣れるには、「楽しみながら」も大切だと思います。(新田氏)
ー RPA導入時に業務の見直し等はされましたか?
大きな変更はありませんでしたが、RPA導入の過程で複雑になっていた作業をシンプルになるよう見直しました。結果的に、RPA化することで業務のスリム化に繋がったと思います。(名波氏)
ー RPAの導入はスムーズでしたか? 困った点、工夫した点などがあれば教えてください。
とくに困ったこともありません。
しっかりとした研修のおかげでRPAの導入はスムーズでしたし、社内にRPAの利便性が広まるのは早かったですね。(名波氏)
いまでは「RPAはないと困る!」です。(新田氏)
ー RPA導入後に困ったことはありますか? その際はどのように解決されましたか?
どうしてもイレギュラーは発生してしまいますので、RPAが止まってしまった場合など、困ったときはヒューマンリソシア様にサポートしていただきました。(名波氏)
RPAに乗せられそうな業務を検討し、最初に「支払状況取込業務」という業務にRPAを導入しました。こちらは東京の社員が1人で2~3日で基本的な形をつくり、実際に動かしながら微調整を加え、1週間ほどで完成しました。
その後、「似たような業務はRPA化できるのでは?」と検討しつつ、RPA導入から3年目の現在、カスタマーセンターだけで6業務まで展開しております。今後まだまだ増えていく予定です。
RPAに展開可能な業務とは、「人間の判断が不要な、誰にでもできる手順の決まっている単純作業」です。
例えば、毎回同じ画面を開いて、決まった箇所のデータを他のファイルの決まった箇所にコピーする作業など、説明も判断も不要なマニュアル化されている作業です。
人が行うとミスが発生してしまう場合がありますが、RPAは決まった作業を正確に実行できることも利点です。(名波氏)
RPA活用事例1.「支払状況取込業務」
お客様がコンビニで支払った伝票(支払情報)がリアルタイムに蓄積される収納代行会社サイトがあり、1時間に1回アクセスして支払情報をダウンロードします。その支払情報を弊社の基幹システムに取り込み、当該お客様の支払ステータスを「振込済」にするという一連の作業をRPA化しました。
1時間に1回、ひとりで視認しつつ1回約15分の処理を1日10回行っていましたので、2時間半の作業になります。この日々2時間半の単純作業から社員が解放されました。(新田氏)
RPA活用事例2.「変更業務」
指定した日付にRPAが動くようシナリオをつくれることも大変重宝しています。
賃料の変更や入居者様の変更情報は、事前に書類で手元に届いていますが、システムに入力して変更処理を行うのは翌月であったり、翌々月であったりする先日付の業務です。その間、「指定日に変更業務を忘れずに行わなければならない」というプレッシャーを持ちつつ、書類を保管しておかなければなりません。
この業務をRPA化することによって、届いた書類の変更情報を即座にExcelへデータとして登録するだけでよくなりました。あとは、指定日になるとRPAが自動的に処理してくれますから。
これまで先送りにせざるを得なかった指定日に行う業務が、RPAの予約機能を使うことによって即時に処理できるようになりました。(新田氏)
RPA活用事例3.「入退去確認FAX送信業務」
不動産業はまだまだ紙媒体が多い業界で、お客様が賃貸契約を現在も継続中かを確認するために、各不動産屋さんにFAXを送る業務があります。
弊社基幹システムから各不動産屋さんのデータを抽出し、フォーマットに入力して、各不動産屋さんへFAXを送信するのですが、毎月2,500件を手作業で160時間かけて作業していました。
その業務をRPA化したことで、事前に必要な準備に10時間かけたあとは、RPAによって倍の5,000件をこなすことが可能になりました。5,000件を手作業で行うとしたら320時間かかります。それをRPA化したことによって、結果的に310時間の作業時間が削減できたという試算になります。
またRPAによってこなせる件数が倍増しましたので、情報の鮮度も上がりました。
こちらのRPAは、私が仕事の片手間に2日ほどで作って動かせるようにし、微調整をしながら1週間ほどで完璧に仕上げました。(新田氏)
(A)数値的に表せる変化
RPAを導入したことによって約1人分のリソース確保となり、カスタマーセンターだけで年間500万円のコストカットになりました。(名波氏)
(B)数値では表せない変化
名波氏、新田氏、おふたりからスラスラといくつもの利点があがりましたので、抜粋してご紹介いたします。
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「人は、教えて、慣れて、ようやく一人前になったと思ったら、辞めてしまうことがあります。人が辞めると品質が落ちてしまい、かなりの痛手となりますが、RPAは辞めません!」(名波氏)
「カツカツだったところに余裕ができました。3年前に自分が行っていた作業を現在RPAがやっています。いまRPAが行っている作業を自分がやると思うと恐ろしいです。RPA化したことで時間に余裕ができ、よりコアな業務や新しい業務に携わることができるようになりました」(新田氏)
「365日、全社休業日も稼働しています」(新田氏)
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最初はRPAに3割任せてみて、うまくいったら5割、次は7割と、RPA化する部分を徐々に広げていきました。
最終的には、「9割RPAにまかせて、イレギュラーな部分、こぼれた部分は人でやる」という感覚が、RPAをうまく運用するコツだと思います。(名波氏)
RPAを導入しようという上層部の決断、チャレンジ精神も必要となってくると思いますが、やってみること、実体験が大切ですね。まずはRPAの研修を受講されることをおすすめ致します。(名波氏)
ISCO リゾテック推進セクションセクションマネージャーの武末泰英(たけすえ・やすひで)氏にお話を伺いました。<取材日:2020年10月27日>
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テレワーク推奨となりました。
ISCOのパソコンには予めテレワークに必要な、Zoom、Office365、Knowledge Suite、ZAC、VPNなど、多彩なツールが入っており、テレワークもスムーズに実施できました。コロナの感染状況によっては、テレワーク率100%を実施したこともあります。
コロナ禍でテレワークを実施してみると、出社しなくても十分に業務が行えるとわかりました。
現在はテレワーク率5割です。今後はテレワーク率を5~7割にする予定です。
ー 非接触型の働き方でとくに気を付けていることがあれば教えてください。
感染対策防止ルールの徹底周知を行っています。
当部署で年間20~30のイベントを開催しておりますので、イベントごとに、収容人数や、人と人の距離など、ルールの見直しを頻繁に行っております。大規模イベントの入口には、瞬時に非接触で検温が可能な受付システムを設置する等、様々な対応を実施してコロナウィルスの感染予防対策を行っています。
当然、新システムを構築する猶予はありません。また、3万件ものデータをすべて手入力するとなれば、膨大な時間と莫大な人件費がかかります。そこで、大量の業務を迅速に処理するためにRPAを導入して対応することにしました。
RPA研修を受ける時間的な猶予はなく、RPAの導入と実装は外部エンジニア1~2名に委託するという体制をとりました。
RPAの導入には業務の棚卸しは必須ですので、ISCO内で行政や申請業務などの専門分野に強い3~4名でチームを作り、仕様を固めました。その仕様を外部エンジニアの手によってRPA化して頂きました。
時間が逼迫していましたので、とにかく動けば良い、と2つのRPAを2週間で作りましたね。その後のトラブルは、外部エンジニアを交えて随時解決していきました。
2万件ほどはWeb申請でいただきましたが、1万件ほどが紙での申請書で寄せられましたので、手書きの申請書を電子申請システムに登録するという作業が発生しました。
AIで文字認識率を高めたAI-OCRで申請書を読み取りデータ化し、視認後、読み取った約1万件のデータを電子システムに登録するRPAを作りました。ちなみに、手書きの申請書をAI-OCRで読み取りデータ化した際の正解率は約99%でした。最近のAI-OCRの文字認識精度は非常に高度になってきましたね。
電子申請システムに入っている約3万件の申請データから、支援金を支給するために必要な振込先などの情報を債権者登録システムへ登録するRPAも作りました。
約3万件のデータ入力に必要な人件費に鑑みると、RPA導入と外部エンジニアの費用は比べ物にならないほど破格でした。
今回は特に、コロナ禍で困っている事業者様の元へいかに早く支援金を届けるか、事務処理スピードが非常に重要です。
手書きの申請書から電子システムに登録するデータは、1件につき50~60項目ありました。人の手でデータ入力をするとなると、慣れた人で10分。それが1万件であれば10万分、約1666時間かかる作業です。1日8時間労働として約208日分の作業時間です。
今回RPAを活用したので、申請から支給までの期間は、最長で1ヶ月半でした。RPAは正確性も高く、入力ミスは起きません。
もしもRPAを導入せず、手入力に頼るようでしたら、申請から支払いまでの期間は3ヶ月以上はかかっていたでしょう。もしかしたら、まだ支給できていなかったかもしれません。
RPAを導入したことで相当な費用対効果が得られたと実感しております。
ISCOでは第1期と第2期にはRPAを導入しましたが、第3期では各システムのデータを自動連携させる新システムを構築したのでRPAを使っていません。必ずしもRPAが必要というわけではないのです。
RPAはひとつの手段であって、システム全体を見直した方がよいのか、RPAを導入した方がよいのか、業務の棚卸による見極めが必要です。
RPAに適する業務・不向きな業務を整理すると以下のようになります。
(1)パソコン上で完結する作業であること
(2)手順の決まっている定型作業であること
(3)人の判断が必要のない作業であること
特に、単純な作業を複数のシステムにまたいで行うような定型的かつ繰り返し型の作業には大きな効果が得られます。
毎回あるいは変則的に操作手順が変わるような作業や、人の判断を必要とする業務には不向きです。
RPA研修は1日だけの受講も可能で、RPAの基本的な動きはITスキルに関係なく、研修を受講すればすぐに理解できるようです。
また、試験的にRPAを導入することで、これまで人の手で長時間かけていた定型業務から解放されるなど、RPA化によるメリットを実感できるようになり、組織全体で「業務自動化」への意識が高まるように感じました。
この「業務自動化」への意識醸成こそが、RPAの導入推進に重要なポイントだと思います。
今回のRPA導入事例から、現場の方々が主体性を持ってRPA化を進めている姿が強く印象に残っています。
会社としてRPAの概要や導入メリットについてしっかりと調査・理解し、会社にとってメリットがあると判断したら、現場にRPA導入に関する権限を与え任せるという経営陣の姿勢が、RPA導入に対する経営陣の役割として大切だと感じました。
ISCOは、沖縄県内のITを元気にするお手伝いをさせて頂く、中立な立場の一般財団法人です。
RPA活用実績もありますので、その企業様に、その業務に、RPAが有効かどうかを見極めることも可能です。
また、RPAに不向きだと思われる業務であっても、「ここまでは人の判断がいらない定型作業」と業務内容の整理ができる場合があります。
RPAが必要なのかどうか、どのRPAがよいのか、研修はどこがよいのか、いろいろと迷われるかと思います。
RPAをはじめ、ITソリューションのお悩みは、ぜひISCOへご相談ください。
現在、沖縄県の先端IT利活用促進事業の一環で、ご相談は無料です。
沖縄で事業所を構えていらっしゃる方の権利ですので、おおいにISCOをご活用ください。
※11/16時点 ソリューション検索順
<取材協力>
「株式会社プログレッシブエナジー」様(http://pec.ne.jp/) 儀間泰様
「全保連株式会社」様(https://www.zenhoren.jp/) 名波祐太郎様、新田未来様
「ヒューマンリソシア株式会社」様(https://resocia.jp/) 冨永毅様、井上紳哉様
「一般財団法人沖縄ITイノベーション戦略センター」(https://isc-okinawa.org/)武末泰英氏
ご多忙のところ、取材ご協力まことにありがとうございました。
<取材・撮影・執筆>
合同会社ジョートー(https://jyo-to.okinawa/) 安積美加
※当特集記事の内容は2020年10月21日~10月28日、取材時の情報です。
当特集は、「コロナ禍における働き方の変化」と、事務作業の効率化に貢献する注目のテクノロジー「RPA」に焦点を当て、実際にRPAをご活用されている沖縄県内企業様のリアルな声をお届け致します。
RPA導入からまもない企業様、RPAご活用3年目の企業様、当サイトを運営しておりますISCO、3社のRPA活用事例をご紹介して参ります。ぜひ最後までご覧ください。
【目次】
- 1.事務作業効率化に貢献する注目テクノロジー「RPA」とは
- 2.沖縄県内企業の「働き方の変化」と「RPA活用状況」
- 株式会社プログレッシブエナジー様
- コロナ禍における働き方の変化
- RPA導入からまもない沖縄県内企業様のRPA活用状況
- PRAの導入をご検討されている企業様へ
- 全保連株式会社様
- コロナ禍における働き方の変化
- RPA導入から3年目の沖縄県内企業様のRPA活用状況
- RPA活用術 ~ PRAの導入をご検討されている企業様へ
- ISCO
- コロナ禍における働き方の変化
- RPAで膨大なデータを迅速かつ正確に処理
- 3.RPAまとめ - ITソリューションに関するご相談はISCOへ
- インダストリンク RPA登録ソリューション
1.事務作業効率化に貢献する注目テクノロジー「RPA」とは
RPAとは、「Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)」の略で、膨大なデータ処理から、メール送信、FAX送信、プリントアウトなど、パソコンで人が行う定型作業を記録して自動で再現できる「ソフトウェア・ロボット」のことです。 ※過去記事もご参照下さい:「RPA」って何?2.沖縄県内企業の「働き方の変化」と「RPA活用状況」
「株式会社プログレッシブエナジー」様(http://pec.ne.jp/)
【事業内容】天然ガス供給事業、可倒式風力関連業務(建設・メンテナンス)、自家発電システム関連事業など。沖縄県内離島の大切なインフラとなっている、日本で唯一の可倒式風力発電の保守メンテナンスも行っております。【写真提供/株式会社プログレッシブエナジー様】粟国島の可倒式風車。風車を「傾倒」することでタワーやブレードを地面と固定し、台風による破損被害を防止します。
--------「株式会社プログレッシブエナジー」総務部管理課課長代理の儀間泰(ぎま・ゆたか)氏にお話を伺いました。<取材日:2020年10月28日>
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株式会社プログレッシブエナジー 総務部管理課課長代理 儀間泰氏
コロナ禍における働き方の変化
ー コロナ禍において働き方に変化はありましたか?弊社は、現場での業務がメインのため在宅勤務は難しい状況ですが、緊急事態宣言発令時には社内外関係者等の打合せをオンライン会議で行うようにしました。
ー 非接触型の働き方でとくに気を付けていることがあれば教えてください。
基本的には3密を避ける、マスクをつける、手洗い消毒をするなど一般的に言われている事を徹底しています。
RPA導入からまもない沖縄県内企業様のRPA活用状況
RPA導入概要
現場からRPAの試験導入を上層部にご提案され、業務担当者の方々が主体となってRPAの導入を進められました。2019年12月からRPA導入のご検討を開始。2020年3月よりトライアル版RPAの試験導入を実施。作業時間の大幅な削減などの効果が得られたため、2020年9月からRPAを本格導入されました。
株式会社プログレッシブエナジー社内風景。手前のパソコンは24時間RPAの稼働が可能な専用端末。
PRA導入までの道のり
ー RPAの導入について経営層の方へはどのようにご説明されましたか? また、どのようなご準備をされましたか?経営層には、RPAがどういったものか、実際にRPAが稼働しているところを見てもらうことが大切だと思います。
既にRPAを活用されている関連会社へ伺い、実際にRPAが稼働しているところを見学させて頂きながらお話を伺いました。その際に、RPAが動いている様子を撮影させていただき、その動画を経営層に見てもらいました。
また、無料や安価で試せるRPAソフトを試験的に導入することによって、RPAに対する社内イメージの共有を図りました。
ー RPA導入の決め手を教えてください。
トライアル版RPAを一定期間導入したところ、RPA導入費用と比較しても、作業時間の大幅な削減によるコスト低減が見込めるなど、十分に効果が得られるとわかったことが導入の決め手です。
ー RPAを導入するために行われたことを教えてください。
RPAは通常行っている定型業務をロボットが自動化してくれるというものです。
そのため、RPA導入プロジェクトのメンバーは、定型業務のある課から実際に日頃の業務を行っている人を出してもらい、RPA研修に参加し、RPAのシナリオ(RPAが実行する業務フロー)作成スキルを身につけて頂くという方法を取りました。RPA導入プロジェクトは5名で行い、その中にIT知識のあるメンバーは私含め2名でした。
RPA化が見込める業務を各課で洗い出し、各課並行でRPA化を行い、2週間に1度進捗状況を報告するという形で進めました。困ったことがあると意見を出し合うことで、互いのスキルを高め、視野を広げることが出来ると考えたからです。
ー RPAを使うためのITスキル、業務知識レベルはどの程度必要でしょうか?
RPA化するためには、実際に業務手順を理解していることが必要だと思います。
ITスキルがない人でも、ヒューマンリソシア様のRPA研修を受けたことで、RPAの動きはすぐに理解できました。
RPAのシナリオ作成は、簡単なシナリオであればITスキルに関係なく、一度研修を受講すれば作成可能です。
ー RPA導入時に業務の見直し等はされましたか?
RPA化を進める上で、業務の効率化が図れるよう手順の見直しなどは行いましたが、大きく業務を見直したということはありません。
現場と上層部のパイプラインとなってRPA導入プロジェクトを牽引された儀間氏
ー RPAの導入はスムーズでしたか? 困った点、工夫した点などがあれば教えてください。
RPA化プロジェクトメンバーは、業務担当者にRPA化のスキルを身につけてもらい、その上でITスキルの高い者がサポートに入るという体制で導入プロジェクトを開始しました。
業務担当者とITスキル保持者が二人三脚の形をとることで、RPA化プロジェクトメンバー内で複雑な業務に対応したRPAシナリオを作成することが可能となりました。
また、前述の通り、ITスキルがない人でもヒューマンリソシア様のRPA研修を受けることで、簡単なシナリオであれば作成可能でした。
(注:ITスキル保持者ご不在の場合も、ヒューマンリソシア様で研修やオンサイトサポートをご提供されているため、複雑なシナリオの対応も可能です。)
困った点としては、RPA化プロジェクトメンバー以外の社員もプロジェクト定例会議に参加し、RPA化の参加を促したいと考えていましたが、コロナ禍により思うように定例会議へ参加出来なかったことですね。
ー RPA導入後に困ったことはありますか? その際はどのように解決されましたか?
トライアル版RPA導入から数えても、まだ8ヶ月程度なので具体的に困ったということはありませんが、RPA化したことにより業務手順がブラックボックス化しないようにすることが今後の課題になると思います。
新たな担当者が来た場合に、作業内容を把握せずに業務が完了してしまうということが考えられるため、どのような処理を行っているかを教える必要があると感じています。
RPA活用状況 ー RPAへの理解が深まるにつれ効率化が図れる業務が見えてきました
RPAへの理解が深まるにつれて、当初予定していた業務以外にも効率化が図れる業務が見えてきたため、RPA化の対象業務を拡げ、現在複数の業務にRPAを導入して運用しております。例えば、関係省庁に毎月提出する報告資料の作成や、コスト削減効果は小さいのですが、お客さまへの定例報告メールをRPA化することで、メール送信ミスの防止を図っています。
RPA活用事例1.「ガス使用量把握業務」
クラウド上にある各顧客データの取得業務をRPA化することで毎朝の作業時間から解放
天然ガス供給事業において、毎朝30分~50分ほど掛けて、お客様のガス使用状況を把握する業務があります。具体的には、パソコンからクラウド上にあるシステムにログインして、各お客様のデータを取得するという単純な手作業での業務をRPA化しました。
RPA研修を受講した当該業務に精通している者が、1~2日でRPAシナリオを作成し、改修を重ね約2週間で運用可能な形になりました。
【写真提供/株式会社プログレッシブエナジー様】24時間365日の保安体制でガスの安定供給に努めています。
RPA活用事例2.「会計ソフトデータ入力業務」
「複雑な入力業務」を「シンプルな入力業務」に置き換えることが可能に
経理業務おいて、会計ソフトへデータを入力する業務があるのですが、入力項目が細かく複雑で多岐に渡るため、経理経験者と慣れていない者との作業時間にかなりの差がありました。そこで、経験を必要とする複雑な会計ソフトの入力フォーマットを、Excelで見やすくシンプルな形に整え、これまで会計ソフトへ入力していたデータを、Excelのフォーマットに入力するように変えました。
Excelに手入力したデータを、RPAがExcelから会計ソフトへコピー&ペーストを行う方式に変更したのです。
RPAを使って、「複雑な会計ソフト入力業務」を「シンプルなExcel入力業務」に置き換えることが出来たことで、経験が少ない者でも容易に行えるようになり、入力ミスが低減され、作業時間が大幅に削減できました。
RPA導入後の変化 ー 年間1,500時間の作業時間削減
ー RPAを導入後、どのような変化がありましたか?(A)数値的に表せる変化
試算値ではあるのですが、現在、RPAを計画している業務を含めると年間で約1,500時間の作業時間削減を見込んでいます。
(B)数値には表せない変化
RPA化によって業務の効率化を考えるきっかけになっているのではと感じています。
RPAの導入をご検討されている企業様へ
ー RPAの導入をご検討されている企業様へアドバイスをお願いいたします。弊社の場合、RPA専用パソコンを設置し、24時間RPAを稼働できる状況にしました。これまで人手が取られていた会計ソフトへの入力など、定型作業を夜間や他の作業中に、RPAを稼働させることで作業時間を大幅に減らすことが出来ています。
弊社は幾つかのRPAを試してみて、直感的にわかりやすく、沖縄で研修制度が整っているRPAを選びました。
まずは、安価なトライアル版RPAを簡単な業務に導入してみることで、自社でRPA化した際の効果が体感出来ると思います。
【写真提供/株式会社プログレッシブエナジー様】沖縄から8,090 km離れたトンガ王国に設置されている5基の可倒式風力車。沖縄で培ってきたノウハウが活かされています。
「全保連株式会社」様(https://www.zenhoren.jp/)
【事業内容】家賃債務保証および賃料管理リスクヘッジ業務。-----
「全保連株式会社」カスタマーセンターのBM推進課長 名波祐太郎(なは・ゆうたろう)氏、新田未来(にった・みく)氏のおふたりからお話を伺いました。<取材日:2020年10月21日>
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全保連株式会社 カスタマーセンター 新田未来氏
コロナ禍における働き方の変化
ー コロナ禍において働き方に変化はありましたか?2020年3月以降コロナの影響でテレワークはマストとなっており、弊社も在宅勤務を取り入れ、推奨しています。
以前はFAXや外線電話の問題がありましたが、現在はペーパレス化やWeb電話などを使ってテレワークでの対応も可能となりました。
コロナ禍以前より、お客様の満足度アップのために、CRMという顧客管理システムをCTI(*)に組み合わせて、通話中の顧客情報の確認やリアルタイムでの情報更新を可能にしておりましたので、テレワークへの移行はスムーズでした。
テレワークに変わっても業務内容は同じで、RPAもリモート操作で行っています。環境さえ整えばテレワーク・在宅勤務も可能なのです。(名波氏)
(*)CTI(Computer Telephony Integration)とは、コンピューターと電話を統合したシステムのことです。
ー 非接触型の働き方でとくに気を付けていることがあれば教えてください。
テレワークが増え、各々ひとりで仕事をしている状態になっていますので、社員ひとり一人のメンタル・ケアに一番気を遣っています。一体感醸成、情報共有のために、テレワーク朝礼はWeb会議ツールのZoomで意識的に行っています。また、テレワークとなると対応が難しい案件をひとりで受ける場面もありますので、わたしは常にZoomに入れる状態にしており、いつでも社員が気軽に相談できる体制にしています。(名波氏)
【写真提供/全保連株式会社様】社内風景。
RPA導入から3年目の沖縄県内企業様のRPA活用状況
RPA導入概要
沖縄本社、東京本社に加え、全国16ヶ所に支社を展開。今回お話を伺った沖縄のカスタマーセンターは、契約書や全国の不動産業者様から届く書類の登録業務やヘルプデスクなどを担っており、2018年のRPA導入から3年、仮想環境にあるRPAをさまざまな業務に活用されています。RPA導入までの道のり
ー RPA導入の決め手を教えてください。以前からお付き合いのあるヒューマンリソシア様が実践を踏まえたRPA研修をご提供されていたこと、本格導入の前に先行して一部業務で1年間のRPA評価期間を設けたことが大きかったですね。
RPAに掛かったコスト以上にコストカットができる目処のある業務がありましたので、もとは取れるという試算があったこともあり、上層部の決断も早かったと思います。(名波氏)
ー RPAを導入するために行われたことを教えてください。
カスタマーセンターの2名が沖縄で研修を受けました。RPAがどういったものか、という理解は半日でできました。
研修ではRPAの動かし方を学びます。例えば、ExcelでAという項目を別のExcelファイルにコピーする作業を実践してみるなどです。やっていくうちに疑問や課題が生じますので、その際は補習で対応していただきました。(新田氏)
ー RPAを使うためのITスキル、業務知識レベルはどの程度必要でしょうか?
通常業務の流れを理解していれば大丈夫です。タイピングもままならない、マクロを知らない、といった一般的なITレベルの人で問題ありません。(名波氏)
RPAは、実際に触れてみて、試行錯誤しつつ、徐々に理解が深まりました。わかりやすいイラストのアイコンで直感的に操作ができ、パズルをしているイメージです。慣れてくると、「これをやってみよう」、「次はあれをやってみよう」といろいろとRPAに覚えてもらいます。育成ゲームみたいな感覚ですね。使っているうちにRPAに愛着がわき、止まると「今日はどうしたの?」と思うほどRPAがかわいく思えます。RPAに慣れるには、「楽しみながら」も大切だと思います。(新田氏)
ー RPA導入時に業務の見直し等はされましたか?
大きな変更はありませんでしたが、RPA導入の過程で複雑になっていた作業をシンプルになるよう見直しました。結果的に、RPA化することで業務のスリム化に繋がったと思います。(名波氏)
ー RPAの導入はスムーズでしたか? 困った点、工夫した点などがあれば教えてください。
とくに困ったこともありません。
しっかりとした研修のおかげでRPAの導入はスムーズでしたし、社内にRPAの利便性が広まるのは早かったですね。(名波氏)
いまでは「RPAはないと困る!」です。(新田氏)
ー RPA導入後に困ったことはありますか? その際はどのように解決されましたか?
どうしてもイレギュラーは発生してしまいますので、RPAが止まってしまった場合など、困ったときはヒューマンリソシア様にサポートしていただきました。(名波氏)
RPA活用状況 ー 6業務までRPAを展開。さらなる業務のRPA化計画が進行中
「現場がやりたいことが素早くできる」という点は、RPAの非常に大きな利点です。現場の社員がRPAのシナリオ(RPAが実行する業務フロー)を作り、動かし、すぐに使えるという点です。RPAに乗せられそうな業務を検討し、最初に「支払状況取込業務」という業務にRPAを導入しました。こちらは東京の社員が1人で2~3日で基本的な形をつくり、実際に動かしながら微調整を加え、1週間ほどで完成しました。
その後、「似たような業務はRPA化できるのでは?」と検討しつつ、RPA導入から3年目の現在、カスタマーセンターだけで6業務まで展開しております。今後まだまだ増えていく予定です。
RPAに展開可能な業務とは、「人間の判断が不要な、誰にでもできる手順の決まっている単純作業」です。
例えば、毎回同じ画面を開いて、決まった箇所のデータを他のファイルの決まった箇所にコピーする作業など、説明も判断も不要なマニュアル化されている作業です。
人が行うとミスが発生してしまう場合がありますが、RPAは決まった作業を正確に実行できることも利点です。(名波氏)
RPA活用事例1.「支払状況取込業務」
既存の2つのシステムをRPAでつなぐことによって日々2時間半の単純作業から解放
お客様がコンビニで支払った伝票(支払情報)がリアルタイムに蓄積される収納代行会社サイトがあり、1時間に1回アクセスして支払情報をダウンロードします。その支払情報を弊社の基幹システムに取り込み、当該お客様の支払ステータスを「振込済」にするという一連の作業をRPA化しました。1時間に1回、ひとりで視認しつつ1回約15分の処理を1日10回行っていましたので、2時間半の作業になります。この日々2時間半の単純作業から社員が解放されました。(新田氏)
RPA活用事例2.「変更業務」
先日付業務もRPAの予約機能でストレスフリー
指定した日付にRPAが動くようシナリオをつくれることも大変重宝しています。賃料の変更や入居者様の変更情報は、事前に書類で手元に届いていますが、システムに入力して変更処理を行うのは翌月であったり、翌々月であったりする先日付の業務です。その間、「指定日に変更業務を忘れずに行わなければならない」というプレッシャーを持ちつつ、書類を保管しておかなければなりません。
この業務をRPA化することによって、届いた書類の変更情報を即座にExcelへデータとして登録するだけでよくなりました。あとは、指定日になるとRPAが自動的に処理してくれますから。
これまで先送りにせざるを得なかった指定日に行う業務が、RPAの予約機能を使うことによって即時に処理できるようになりました。(新田氏)
RPA活用事例3.「入退去確認FAX送信業務」
FAX送信業務もRPA化によって作業時間が激減、情報鮮度も向上
不動産業はまだまだ紙媒体が多い業界で、お客様が賃貸契約を現在も継続中かを確認するために、各不動産屋さんにFAXを送る業務があります。弊社基幹システムから各不動産屋さんのデータを抽出し、フォーマットに入力して、各不動産屋さんへFAXを送信するのですが、毎月2,500件を手作業で160時間かけて作業していました。
その業務をRPA化したことで、事前に必要な準備に10時間かけたあとは、RPAによって倍の5,000件をこなすことが可能になりました。5,000件を手作業で行うとしたら320時間かかります。それをRPA化したことによって、結果的に310時間の作業時間が削減できたという試算になります。
またRPAによってこなせる件数が倍増しましたので、情報の鮮度も上がりました。
こちらのRPAは、私が仕事の片手間に2日ほどで作って動かせるようにし、微調整をしながら1週間ほどで完璧に仕上げました。(新田氏)
RPA導入後の変化 ー 年間500万円のコストカットが実現
ー RPAを導入後、どのような変化がありましたか?(A)数値的に表せる変化
RPAを導入したことによって約1人分のリソース確保となり、カスタマーセンターだけで年間500万円のコストカットになりました。(名波氏)
(B)数値では表せない変化
名波氏、新田氏、おふたりからスラスラといくつもの利点があがりましたので、抜粋してご紹介いたします。
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「人は、教えて、慣れて、ようやく一人前になったと思ったら、辞めてしまうことがあります。人が辞めると品質が落ちてしまい、かなりの痛手となりますが、RPAは辞めません!」(名波氏)
「カツカツだったところに余裕ができました。3年前に自分が行っていた作業を現在RPAがやっています。いまRPAが行っている作業を自分がやると思うと恐ろしいです。RPA化したことで時間に余裕ができ、よりコアな業務や新しい業務に携わることができるようになりました」(新田氏)
「365日、全社休業日も稼働しています」(新田氏)
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RPA活用術
はじめから100%のことをRPAでやろうと思うと転びますね。イレギュラーなケースを考えると大変なことになりますから。最初はRPAに3割任せてみて、うまくいったら5割、次は7割と、RPA化する部分を徐々に広げていきました。
最終的には、「9割RPAにまかせて、イレギュラーな部分、こぼれた部分は人でやる」という感覚が、RPAをうまく運用するコツだと思います。(名波氏)
全保連株式会社 カスタマーセンター BM推進課長 名波祐太郎氏(中央)と新田氏
RPAの導入をご検討されている企業様へ
ー RPA導入を検討されている企業様へアドバイスをお願いいたします。RPAを導入しようという上層部の決断、チャレンジ精神も必要となってくると思いますが、やってみること、実体験が大切ですね。まずはRPAの研修を受講されることをおすすめ致します。(名波氏)
一般財団法人沖縄ITイノベーション戦略センター(略称:ISCO) https://isc-okinawa.org/
【事業内容】沖縄県内におけるICTの活用、取組支援、補助事業など、ITで沖縄をもっと便利に、元気にするための沖縄県の外郭団体。沖縄県から委託を受け、当サイトの運営も行っております。
--------ISCO リゾテック推進セクションセクションマネージャーの武末泰英(たけすえ・やすひで)氏にお話を伺いました。<取材日:2020年10月27日>
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【写真提供/ISCO】ISCO リゾテック推進セクションマネージャー 武末泰英氏
コロナ禍における働き方の変化
ー コロナ禍において働き方に変化はありましたか?テレワーク推奨となりました。
ISCOのパソコンには予めテレワークに必要な、Zoom、Office365、Knowledge Suite、ZAC、VPNなど、多彩なツールが入っており、テレワークもスムーズに実施できました。コロナの感染状況によっては、テレワーク率100%を実施したこともあります。
コロナ禍でテレワークを実施してみると、出社しなくても十分に業務が行えるとわかりました。
現在はテレワーク率5割です。今後はテレワーク率を5~7割にする予定です。
ー 非接触型の働き方でとくに気を付けていることがあれば教えてください。
感染対策防止ルールの徹底周知を行っています。
当部署で年間20~30のイベントを開催しておりますので、イベントごとに、収容人数や、人と人の距離など、ルールの見直しを頻繁に行っております。大規模イベントの入口には、瞬時に非接触で検温が可能な受付システムを設置する等、様々な対応を実施してコロナウィルスの感染予防対策を行っています。
【写真提供/ISCO】ISCO社内風景。
RPA活用事例 ー RPAで膨大なデータを迅速かつ正確に処理
RPA導入概要
コロナ禍において、沖縄県内の事業者様に県の支援金を支給するための事務処理を迅速に行う必要に迫られRPAを導入。RPA導入経緯 ー コロナ禍で一刻を争う支援金事務処理の選択肢にRPA
沖縄県内事業者様に県の支援金を支給するための事務処理を県から受託しました。事業者様から寄せられた約3万件もの支援金申請の事務手続を迅速に行い、コロナ禍でお困りの事業者様の元へ一刻も早くお届けする必要がありました。当然、新システムを構築する猶予はありません。また、3万件ものデータをすべて手入力するとなれば、膨大な時間と莫大な人件費がかかります。そこで、大量の業務を迅速に処理するためにRPAを導入して対応することにしました。
RPA導入 - 仕様書はISCOで作成、RPA導入実装は外部エンジニアへ委託
2020年4月末の第1期と、8月の第2期にRPAを導入しました。RPA研修を受ける時間的な猶予はなく、RPAの導入と実装は外部エンジニア1~2名に委託するという体制をとりました。
RPAの導入には業務の棚卸しは必須ですので、ISCO内で行政や申請業務などの専門分野に強い3~4名でチームを作り、仕様を固めました。その仕様を外部エンジニアの手によってRPA化して頂きました。
時間が逼迫していましたので、とにかく動けば良い、と2つのRPAを2週間で作りましたね。その後のトラブルは、外部エンジニアを交えて随時解決していきました。
【写真提供/ISCO】
RPA活用事例 - コロナ禍でお困りの事業者様の元へ支援金をいち早くお届けすることが可能に
支援金の申請方法には、各事業者様がインターネットから沖縄県電子申請サービスに直接Web申請(登録)する方法と、手書きの申請書による方法があります。2万件ほどはWeb申請でいただきましたが、1万件ほどが紙での申請書で寄せられましたので、手書きの申請書を電子申請システムに登録するという作業が発生しました。
AIで文字認識率を高めたAI-OCRで申請書を読み取りデータ化し、視認後、読み取った約1万件のデータを電子システムに登録するRPAを作りました。ちなみに、手書きの申請書をAI-OCRで読み取りデータ化した際の正解率は約99%でした。最近のAI-OCRの文字認識精度は非常に高度になってきましたね。
電子申請システムに入っている約3万件の申請データから、支援金を支給するために必要な振込先などの情報を債権者登録システムへ登録するRPAも作りました。
約3万件のデータ入力に必要な人件費に鑑みると、RPA導入と外部エンジニアの費用は比べ物にならないほど破格でした。
今回は特に、コロナ禍で困っている事業者様の元へいかに早く支援金を届けるか、事務処理スピードが非常に重要です。
手書きの申請書から電子システムに登録するデータは、1件につき50~60項目ありました。人の手でデータ入力をするとなると、慣れた人で10分。それが1万件であれば10万分、約1666時間かかる作業です。1日8時間労働として約208日分の作業時間です。
今回RPAを活用したので、申請から支給までの期間は、最長で1ヶ月半でした。RPAは正確性も高く、入力ミスは起きません。
もしもRPAを導入せず、手入力に頼るようでしたら、申請から支払いまでの期間は3ヶ月以上はかかっていたでしょう。もしかしたら、まだ支給できていなかったかもしれません。
RPAを導入したことで相当な費用対効果が得られたと実感しております。
ISCOでは第1期と第2期にはRPAを導入しましたが、第3期では各システムのデータを自動連携させる新システムを構築したのでRPAを使っていません。必ずしもRPAが必要というわけではないのです。
RPAはひとつの手段であって、システム全体を見直した方がよいのか、RPAを導入した方がよいのか、業務の棚卸による見極めが必要です。
3.RPAのまとめ ~ ITソリューションに関するご相談はISCOへ
RPAは正確性の高いツールです。しかし、本当にRPAが必要なのか、その見極めが必要です。RPAに適する業務・不向きな業務を整理すると以下のようになります。
RPAに適する業務
次の3つの条件を満たしていれば、その業務はRPA化が可能です。(1)パソコン上で完結する作業であること
(2)手順の決まっている定型作業であること
(3)人の判断が必要のない作業であること
特に、単純な作業を複数のシステムにまたいで行うような定型的かつ繰り返し型の作業には大きな効果が得られます。
RPAに不向きな業務
RPAは、記録されている手順だけを迅速に正確に再現するロボットと考えてください。毎回あるいは変則的に操作手順が変わるような作業や、人の判断を必要とする業務には不向きです。
取材を振り返って
沖縄県内企業様におけるRPA導入前の共通点として、RPAの研修を受講されていることと、RPAの試験導入により実際に現場でRPAを運用されているということが挙げられます。RPA研修は1日だけの受講も可能で、RPAの基本的な動きはITスキルに関係なく、研修を受講すればすぐに理解できるようです。
また、試験的にRPAを導入することで、これまで人の手で長時間かけていた定型業務から解放されるなど、RPA化によるメリットを実感できるようになり、組織全体で「業務自動化」への意識が高まるように感じました。
この「業務自動化」への意識醸成こそが、RPAの導入推進に重要なポイントだと思います。
今回のRPA導入事例から、現場の方々が主体性を持ってRPA化を進めている姿が強く印象に残っています。
会社としてRPAの概要や導入メリットについてしっかりと調査・理解し、会社にとってメリットがあると判断したら、現場にRPA導入に関する権限を与え任せるという経営陣の姿勢が、RPA導入に対する経営陣の役割として大切だと感じました。
こんなお悩みや疑問はありませんか?
- ・うちの業務はRPA化できるの?
- ・RPAを導入してみたいけれど、たくさんあってどれが良いのかわからない。
- ・沖縄でRPAの研修を受けてみたいけれど、どこがよいかな?
- ・OCRを取り入れたいが、もっと沖縄のOCRに関する情報が欲しい。
- ・社内でIT化できるものはIT化したいけれど、漠然としていてどうしたらよいかわからない。
- ・協力企業さんとの提携業務をもっとIT化できないだろうか?
ISCOは、沖縄県内のITを元気にするお手伝いをさせて頂く、中立な立場の一般財団法人です。
RPA活用実績もありますので、その企業様に、その業務に、RPAが有効かどうかを見極めることも可能です。
また、RPAに不向きだと思われる業務であっても、「ここまでは人の判断がいらない定型作業」と業務内容の整理ができる場合があります。
RPAが必要なのかどうか、どのRPAがよいのか、研修はどこがよいのか、いろいろと迷われるかと思います。
RPAをはじめ、ITソリューションのお悩みは、ぜひISCOへご相談ください。
現在、沖縄県の先端IT利活用促進事業の一環で、ご相談は無料です。
沖縄で事業所を構えていらっしゃる方の権利ですので、おおいにISCOをご活用ください。
RPA導入などのIT導入を検討している方へ
IT導入に関する課題を専門家が無償でご支援する サービス(沖縄県からの委託事業)を提供します。
ご希望の方は、まずは、こちらからお申し込みください。
https://forms.gle/2t6Xmh5aJWk2TUXY8
(予算に限りがありますので、早めにご検討ください。)
インダストリンク RPA登録ソリューション
- ・WinActor ヒューマンリソシア株式会社
- ・RPA トラストコミュニケーション株式会社
- ・UiPath 株式会社国建システム
- ・OT Robo 沖縄通信ネットワーク株式会社
- ・Owlgarden RPA 株式会社エクス
- ・RPA導入支援サービス 沖縄日立ネットワークシステムズ株式会社
- ・WinActor 株式会社okicom
- ・アシロボ 株式会社システック沖縄
- ・アシロボ(RPA) 株式会社オキット
※11/16時点 ソリューション検索順
<取材協力>
「株式会社プログレッシブエナジー」様(http://pec.ne.jp/) 儀間泰様
「全保連株式会社」様(https://www.zenhoren.jp/) 名波祐太郎様、新田未来様
「ヒューマンリソシア株式会社」様(https://resocia.jp/) 冨永毅様、井上紳哉様
「一般財団法人沖縄ITイノベーション戦略センター」(https://isc-okinawa.org/)武末泰英氏
ご多忙のところ、取材ご協力まことにありがとうございました。
<取材・撮影・執筆>
合同会社ジョートー(https://jyo-to.okinawa/) 安積美加
※当特集記事の内容は2020年10月21日~10月28日、取材時の情報です。