テレワークとは?沖縄県内2社の導入事例のご紹介

最終更新日:2020年06月30日

「テレワーク」実施企業様へのインタビュー

新型コロナウイルスの感染拡大防止対策としての自粛要請により、多くの企業や店舗の営業、事業活動がストップされました。事業を停止することができない業種、業態によっては、新しい働き方としてテレワーク導入が進みました。テレワークとは「会社に出勤せずに自宅や他の場所で仕事を行う」ことです。
 
インダストリンクでは、沖縄県内でテレワークを導入している2社の企業様へテレワーク導入のメリットや実例などをインタビューし、これからテレワークの導入を検討している企業様へ参考となる情報を提供します。
※企業情報保護のため、画像は画素数を下げて掲載しています。

1社目は、不動産賃貸業を営む株式会社マルユウハウジー 取締役 當眞貴代さんにお話をお伺いしました。

写真:マルユウハウジー本社外観 社員数:30名
 
写真:株式会社マルユウハウジー 取締役 當眞貴代さん

1.御社の説明をお願いします。
当社は不動産賃貸業を行っているマルユウハウジー、ガスと住宅建築設備を販売しているマルユウエナジーと、設計・建築を行っているトーマスアーキテクトの3社で、住環境の総合サービスを提供しています。
テレワークを導入しているのは不動産賃貸業のマルユウハウジーです。
 
2.テレワークを導入したきっかけを教えてください。
不動産賃貸管理業を行うにあたり、オーナー様への家賃収入の送金が遅れてしまうと、多大なるご迷惑をお掛けしてしまうため、災害やパンデミックが発生した場合でも業務が滞ることがないようにするためにテレワークを導入しました。
 
3.テレワーク実施の発起人はどなたでしたか。
実は私です。所属する業務推進部の会議の中で『もし、新型コロナウイルスの感染者が出た場合、会社業務が全部止まってしまったらどうするのか』という危機感から、リスクヘッジのためにテレワークを提案しました。
 
4.テレワーク導入に対して、どんな準備をしましたか。
テレワーク導入を開始したのは2020年4月からです。
テレワークを行うにあたり、準備したのはPCの手配や社員の自宅のネットワーク環境の確認、wi-fiの発注をしました。
不足分のPCはレンタルでまかなう事が出来ました。レンタルにしたのは早急な手配にも柔軟に対応いただき、保守・補償がしっかりしていたからです。
当社はIT課があり、システム構築や設定ができる社員がいるので、自社で設定ができました。
 
5.テレワークはどのように行っていますか。
まずは、月水金を出勤するA班、火木土を出勤するB班の2班に分けての出勤体制にしました。
テレワーク導入前よりクラウド勤怠管理システムを導入してたのは良かったです。
 
出勤した班は社内で電話対応を行いますが、テレワークで在宅勤務をしている社員は、事務処理などの作業を行います。事務処理のPC作業は、OSにプリインストールされているリモートデスクトップ機能を使い、自宅のPCから会社のデスクトップPCへアクセスし作業を行っています。
 
社内情報共有システムや物件管理システムは社外からもアクセスが可能なため、自宅以外でも外出先からも作業をすることができます。



写真:業務に必要なシステムはクラウドサービスなどを併用

また、Zoomを使い、毎日の朝礼と夕礼を徹底して行っています。社内ミーティングもZoomを使って行っています。クラウドのカレンダー機能で、社員一人一人の一日のスケジュールを管理しています。
 
上長への報告や担当者へ個別の連絡などは、情報共有システムやLINEなどのコミュケーションツールを利用してやりとりしています。

不動産業界では、対面での対応や商談が不可欠な業種の為に、完全なテレワークは不可能だと思っていましたが、法改正やITツールの進化により、様々な問題が解決できるようになりました。
これまでの不動産取引では、宅地建物取引士主任者が対面で『重要事項説明』を行わなければいけませんでしたが、2017年からITを活用した重要事項説明(IT重説)が可能になり、ビデオ会議ツールを利用して、お客様と取引ができるようになりました。
IT重説とオンライン会議ツールにより、県外から移住されるお客様との賃貸契約がスムーズになりました。



6.テレワーク導入で一番難しかったところを教えてください。
社員のPCスキルにバラつきがあったため、PC操作が苦手な方にレクチャーするのが大変でした。
しかし、自粛要請がある中での業務遂行のためには、『やらなければ・やるしかない』という意識が生まれ、社員全員がテレワーク業務を出来るようになりました。
 
ハード面での問題では、オンライン会議を開く際に、これまで使っていたツールでは回線の接続状況が悪く、上手くいかなかったために、Zoomを使用するようになりました。

写真:WEBカメラで支店の様子が見える化しています

7.資料や書類の管理はどうしていますか。
5年前の本社移転の際にすべての紙資料をデータ化し、社内サーバに格納しておりました。テレワーク業務を行う場合は、必要な資料を前日にクラウドに移動し、作業日に使用できるように準備しています。
現在では、製本が必要な契約書以外はほぼ電子データでの取り扱いが可能になっています。
 
8.テレワーク実施のメリット、デメリットを教えてください。
テレワークのメリットは
  • ①業務にメリハリがついた
  • 出勤日は電話対応など、突発的な仕事に追われますが、テレワークの日は電話対応が無い分、書類作成に集中できるので、メリハリをつけて仕事ができるようになったため、業務効率が上がりました。
  • ②計画的な業務遂行ができるようになった
お客様の来店を予約制にしたことで、対応しやすくなりました。
また、1日ごとの交代制の出勤体制では、業務のスケジューリングや資料の事前準備が必要になり、社員みんなが計画的に仕事をできるようになりました。

③人事評価がしやすくなった
業務を見える化することで、勤務態度だけでなく、テレワークでの成果物でも人事評価ができるようになりました。

④通勤時間が無くなった分、時間を有効活用できる
テレワークでは通勤時間が無くなった分、資格取得の勉強時間に充てたり、睡眠時間や休息時間など体調管理をしたり、家族と過ごす時間が増えたと喜んでいます。

テレワークのデメリットを教えてください。
①気軽にコミュニケーションが取れない
社内でデスクが隣同士のような気軽に質問や会話ができないため、細かい意思疎通ができない。

②文字だけでのコミュニケーションは思った以上に難しい
文章だけでは誤解を招き、錯誤してしまうケースがありますね。

③確認や質問に時間がかかる
確認や質問をするためには、電話をかけなければいけない、チャットで文章を書かなければならないため、ちょっとした確認などでも時間や手間がかかります。

9.業務別のテレワークのメリット、デメリット、課題があれば教えてください。
人事を担当する者として、社員の働き方が見えないのは人事評価が難しくなるかと思っていましたが、テレワークになって、社員の働く様子が見れない分、成果物での判断になったので評価がしやすくなりました。
 
営業担当のデメリットとして、テレワーク中でお客様先へ商談にお伺いし、ご契約の話になった場合、社内でしか契約書が作成できないので、契約にタイムラグが出てしますので、商談は社内での対応が良いと感じました。
 
10.社員の反応はいかがでしょうか
社内アンケートでは、「家族との時間が増えて嬉しい」という声が多くありますね。

11.お客様の反応はいかがでしょうか
新型コロナウイルスの状況もあり、テレワーク体制にもご理解いただけたので、問題なく対応できました。
 
12.テレワークを実施して、最も業務効率化を感じられたところを教えてください。
オンラインミーティングができるようになったので、社外に出ている経営者メンバーや店舗が離れている支店メンバーともミーティングのセッティングがやりやすくなりました。
 
社内オンラインセミナーを開催することで、本店、支店のどちらからでも参加ができるようになり、録画内容で復習ができ、新入社員への教材として利用できるようになりました。
 
最近では、東京まで受講しに行っていた不動産業セミナーがオンラインでの受講可能になったため、出張費を抑えることができました。オンラインセミナーの普及により、上質な情報を低コストで得られるようになったのも良かったです。

13.テレワークを継続しますか、また、将来の展望について教えてください。
今後もテレワークは継続して、社員のライフワークバランスを充実し、働き方改革に対応した企業になれるようにしたいです。
また、産休、育休で優秀な人材が離れていくことがあったので、産休、育休中でもテレワークで仕事ができる仕組みを作り、優秀な人材を確保したいです。

沖縄の不動産会社でどこもテレワークを導入していなかったので、「どこもやっていなければ当社が一番にやってみる」という意気込みで始めました。まだ、現在のテレワークのやり方が正解か不正解か分かりませんが、日々の問題を解決しながら、お客様満足度、社員満足度を上げられるように取り組んでいきたいです。


 
りゅうせき様 「テレワーク」導入につきまして
もう一社はインフラに必要な石油の卸販売を行っている株式会社りゅうせき様の産業エネルギー部門の町田様、廣瀬様にお話を聞きました。

写真右より、産業エネルギー事業部石油担当部長 町田様、石油担当 廣瀬様、総務CSR担当 喜友名様


1.御社の簡単な説明をお願いします。
株式会社りゅうせき産業エネルギー事業部は産業用燃料を販売している部門で、船舶への給油や電気を発電している企業や工場、医療施設への石油の販売を行っています。バスなどの交通、物流関連企業への石油販売も行っています。
 
お客様の生活や事業に必要なエネルギーのライフラインを担い、暮らしを支える企業として事業活動を行っております。
 
2.テレワークを導入したきっかけを教えてください。
沖縄でもコロナウイルス感染拡大の脅威が感じられるようになった3月下旬ごろから検討し、沖縄県内のエネルギーインフラと社員の健康を守るために4月上旬には全社員の出勤を止め、2班の当番制を導入してテレワークを開始しました。

写真:本社ビルには270名ほどの社員が勤務し、来客や運送会社のスタッフの入館も多くあるため、入り口での感染拡大防止へのお願いを掲載
 
写真:出勤する人数を制限し、ソーシャルディスタンスを保つ
 
写真:入り口近くに打合せスペースを作り、来客者と社員のゾーニングを

3.テレワーク発起人はどなたでしたか。
コロナウイルスの感染リスクが高まる中、お客様へうつす可能性や社員間でうつる可能性を考え、対面での営業を制限しなければならなくなったため、事業部長、役員によるトップダウンで早急な決定がされました。
 
4.テレワーク導入に対して、どんな準備をしましたか。
当社は様々な部門がある中で、様々な企業様との取引があることから、各部門で調整を持つ形では必要以上の時間がかかり、後手後手になる可能性があるため、早急にテレワーク対応可能な業務から開始しました。
 
社内にIT部門があるため、テレワーク環境の準備は自社のみでの対応が可能でした。また、自社での独自システムを構築しているため、テレワークでのシステムの使用方法やPCのセッティングなどは、IT部門に教わりながら準備しました。
 
もともと、デスクトップPCとノートPCと半々ぐらいの使用率でしたが、テレワークが出来るように社内にあるノートPCをかき集めて、セットアップしてテレワークが利用できるようにしました。当番制のため、業務を引き継ぐ人へノートPCも受け渡すので、テレワークを行う全ての人へノートPCを提供できました。

写真:自社システムを管理する大きなサーバ室があります

5.テレワークでどのような業務を行っていますか。
対面での営業を控えるようにするためにお客様への対応は電話対応、メール対応に切り替えてコミュニケーションをとっています。
 
在宅勤務では、社内提案資料などを作成し、オンライン会議でチェックしたり、報告を受けたりするなどテレワークで対応しています。
 
在宅勤務時間中に時間が空いてしまった場合には、スキルアップのためにeラーニングを受講するようにしてもらっています。これにより空き時間が発生した場合の有効活用を心掛けています。
 
6.テレワーク導入で一番難しかったところを教えてください。
管理者側からでは、社員がどのように勤務しているのか見えないので、勤怠管理が難しいです。
営業担当や現場担当からの難しい点はやはり報連相です。上司へ業務報告を行うだけでなく、同僚とのコミュニケーションが減ってしまい相談ができない点や何気ない雑談などから得られる有益な情報が得られないところがあります。
 
お客様との連絡については電話などでは細かいところまで伝えることができない場合、補足資料などを作り、伝え方を工夫しました。テレワーク導入で、これまで以上にお客様や上司への『コミュニケーションのあり方』を考えるようになりました。
 
管理者としては、社員と顔を合わせないので、健康管理やストレスなどのメンタル面の把握ができないので、サポートが難しいところもありますね。
 
7.テレワークで利用したツールを教えてください。
オンライン会議はZoomを使用しています。また、通常業務で使用するシステムは、ほぼ自社製であり、社内デスクトップへリモートデスクトップでアクセスし、システム利用しています。
 
8.紙資料や書類の管理はどうしていますか。
稟議書や様々なチェック書類は、テレワークでのオンライン化する時間がなく、出勤している管理者によりアナログ管理での対応をしています。
 
テレワークでオンライン化したのは、人事評価シートです。これまではシートを印刷してチェックし、人事部に提出していたものを、印刷を廃止し、各自メールでチェックして、人事部へメールで提出するようになりました。ペーパーレスにも繋がったので良い業務改善になりました。
 
一部お客様向けには注文内容などをホワイトボードに記載していたアナログ作業をやめて、共有ファイルでのオンライン管理にしたことで業務改善できました。
 
9.テレワーク実施のメリットを教えてください。
①お客様先へ移動時間がなくなったのは大きなメリットですね。移動して打ち合わせをし、帰社するまでに1時間半の時間もかかっていたところ、電話で10分~20分で対応ができるようになったケースもあり、1時間以上の時間を他に有効活用できるようになりました。
 
②テレワークでは空き時間が生まれることで業務内容を見直し、主体性がつきました。それにより時間管理や生産性が向上し、業務効率がかなり良くなったと思います。
 
③オンライン会議では、要件にフォーカスして会議を進められるようになり、面直での会議と比較しても非常に効率が上がりました。
 
④電話や仕事中に呼ばれたりすることが減るので、作業中の邪魔が入らず集中力が上がったため、生産性も上がりました。
 
⑤県外からの来客との打合せでスケジュール調整が簡易になり、スピーディーに打合せが進められるようになりました。オンライン会議の方がスケジューリングはしやすい事を体感しました。
 
10.テレワークのデメリットと検討事項があれば教えてください。
上司、同僚など同じフロアで仕事をしていた場合と比べると、テレワークは電話での連絡が頻繁に必要になるため不便を感じ、また、対面だとおおまかなニュアンスの会話で伝わっていたことが、テレワークでの電話やメールでは伝わりにくいと感じました。
 
今後の検討事項として、紙の書類などの電子化やFAXなどのお客様からの紙資料対応についてはIT化が必要ですね。
また、石油を販売、配送する現場の対応はテレワークできないため、将来的に技術が進化し自動化が進み、配送などの業務も自動化やオンライン化についても、出来る部分での検討を進めていきたいです。
 
11.テレワークを継続しますか、また、将来の展望について教えてください。
現在は通常業務体制に戻りましたが、テレワークでの生産性向上が実証したので、在宅勤務の規定が変わり、申請すればテレワークが可能になりました。
 
企業としてテレワークが目的ではなく、生産性の高く業務効率が良い方法がテレワークであれば、テレワークを活用して利益が上がるように取り組んでいきます。これからも働く人が働きやすく、生産性が上がる方法を追求していきます。
 
コロナウイルスによる影響によって、働き方や環境が大きく変わった時にも仕事のやり方を工夫できる、柔軟な発想ができる社員を育成し、お客様にも喜ばれる対応ができ、収益向上ができるようにテレワークの施策を検討していきます。
 

テレワーク実施について取材を終えての筆者まとめ
テレワークは災害時における企業の事業継続(BC)のために、以前より注目されていましたが、実際に準備・導入出来ている企業は少なく、今回の新型コロナウイルスによる緊急事態宣言や自粛要請により、急遽テレワーク対応を開始した企業が多かったのではないでしょうか。
インタビューしたどちらの企業様も『オーナーの家賃収入を止めてはいけない』『インフラを守るために』といったお客様の利益、生活を守るためにスピードのある対応が必要でした。
短期間でのテレワーク導入は、大変な苦労があったと思います。しかし、今回の経験が予測の出来ない災害などの危機対応へ必ず活かされるでしょう。
 
2社の共通点があったのが、『人事評価がしやすくなった』という点です。テレワークでは、社外での勤務になる分、仕事を見える化し成果物の作成で評価されるため、業務効率が上がり、生産性も向上しました。テレワークでの働き方は人事評価を『成果主義』に変えたのかもしれません。
 
また、テレワークを開始し、これまでと全く違った働き方となった際にも『テレワークは難しいと思っていたが、やってみると意外とできた』と2社から同じ感想がありました。これは2社とも社内の体制や人材が整っているからこその言葉でしょう。
 
マルユウハウジー様はテレワークを継続、積極的に働き方改革を行うことに対し、株式会社りゅうせき様は現在テレワークを終了し通常業務に戻している事から、テレワークを非常事態における緊急対応としたので、『テレワーク』の取り扱いも企業ごとの目的で大きく違ってくるので、どのやり方が良いか判断するのは難しいです。
 
コロナウイルスにより事業活動は新しい生活様式や仕事のやり方、あり方が大きく変わりました。この変化に対応するためにはこれまで以上にテレワークやICTが有効になってきます。
 
インダストリンクでは、さまざまな課題(ニーズ)を抱えた事業者と、その課題を解決に導くITソリューションとをつなぐ新しいプラットフォームです。沖縄県内のITソリューション事例や最新技術などのご紹介も行っています。会員登録(無料)を行うことで課題にマッチした事業者やサービスの紹介をうけることができますので、ぜひ登録よろしくお願いいたします。
沖縄イノベーションマッチングサイト インダストリンク

4月の特集記事では「新型コロナ対策ITソリューション一覧」の情報も掲載しております。こちらもあわせてご確認下さい。

取材協力:
株式会社マルユウハウジー
株式会社りゅうせき
 
--------------------------------------
ライター/カメラマン:AMB企画 新垣有矢
※この記事の内容は2020年5月、6月に行われた取材時の情報です。