窓口はひとつ、広がりは想定以上!数々の「支援」を活用しDXへの道を開いた老舗企業の挑戦~株式会社 沖縄ボイラエンジニアリング~
最終更新日:2025年02月21日
経営者を悩ませるDXへの取り組み。突破口は相談窓口にあり。
一人で悩まず、相談してみよう!
「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と聞いてまず思うことは何でしょうか。「取り組む必要性は感じているが、何から着手したらいいのかわからない」「IT化でさえ不十分なのに、できるだろうか」「資金や人材はどうする?」──実は、今回ご紹介する沖縄ボイラエンジニアリング社も、かつてはそのような思いを抱えていたそうです。突破口となったのは、本サイト『インダストリンク』相談窓口の活用。「初めまして」の挨拶から約2年、様々な支援を活用して課題を一つずつクリアし、今まさにDXの実現に向けて邁進中です。
どのような支援をどう活かし、何を得たのか。これまでの道のりでの苦労も含め、代表取締役の渡慶次泰博(とけしやすひろ)さんにお話を伺いました。
中小企業がDXに取り組むリアルなプロセス、かける思いも垣間見られるお話は必見です。
5年前までガラケーを使用。ITとはほぼ無縁の会社が動く。
─まず御社の概要についてご紹介ください。
沖縄ボイラエンジニアリングは、私の父である現会長が「地域社会の発展に貢献し必要とされる会社を目指す」をモットーに1986年に創業しました。2026年に40周年を迎えます。事業としては、県内各地の給食センターや公立病院、リゾートおよびシティホテルといった大型施設の熱源給湯となるボイラーの販売から施工、メンテナスまでを一括で行っています。ケースによっては施設やニーズに合ったボイラーシステムの設計から手掛けています。
─DXに取り組もうと思われたきっかけは何でしょうか?
書類関係の紙の多さがずっと気になっており、早急なデジタル化が必要だと考えていました。1件の報告書だけでも2~3枚が必要で、どうしても紙の量が増えてしまい、管理も大変でしたから。また、社用携帯はずっとガラケーのままで、情報や画像の共有もできず、パソコンもデスクトップのみ。メールや資料を確認するにも一旦会社に戻らなければならない状況でした。
令和5年に社長に就任したことを機に、「DXを推進して業務の効率化を図り、従業員の負担を軽くしたい」という思いで取り組みを始めたのですが・・・。
─何か障壁があったのですか?
いざとなると、何から手をつけたらいいかわからない。まったくと言っていいほど、きっかけが掴めなかったんです。おそらく多くの企業さんが最初にぶち当たる壁だと思います。DXに取り組みたい気持ちがあっても、スタートできる感覚が得られず、取り組み自体を保留にしてしまう。しかも日々の業務を行いながら取り組まなければならず、かなり高いハードルを感じました。
そんな中でどうにか取り組んだのは、社内で一番ITに強い人材をDX推進担当者とし、ガラケーをスマホに変え、年配の従業員にLINEの操作を覚えてもらったこと。ちょっとずつでいいから、できることから始めよう、と。その時は、普段の業務とは逆に、ベテラン従業員が若手に声をかけてスマホの操作を教えてもらう、若手が丁寧に教えるといった微笑ましいシーンがあちこちで見られました。
約2年でスマホやLINEを社内に浸透させ、そろそろ本格的に取り組もう、DXの糸口を掴もうと訪れたのが、『インダストリンク』相談窓口だったんです。
─相談時の印象とその後の展開をお聞かせください。
以前、DX支援を行う他の窓口に相談に行った際、「会社の規模が合わない」と断られてしまった経験や、「会社としてもう少し課題を整理しなければ」「デジタル化が進んでいないとあきれられないだろうか」といったプレッシャーで、身構えてしまう気持ちも強かったんです。でも、インダストリンクの相談窓口に行ってみて感じたのは、本当に何でも気軽に相談できる、安心して話せるという印象でした。
インダストリンクを運営するISCO※1の担当者は、会社の規模や業種などで間口を狭めず、デジタル化の状況にも何の条件もつけず話を聞いてくれました。初回は「DXに取り組みたい。でも何から始めていいのかわからないんです」と、私の思いだけを熱く伝えた感じになってしまって(笑)。それを丁寧に受け止めて、「急な変革は難しいと思いますよ。まずは『DX計画策定支援の専門家派遣のサポート』※2を受けみてみませんか。他にも色々な支援がありますよ」と、すぐに具体的な提案をいただけました。その後の対応も早かったです。
DXの最初の一歩、「どこに相談するか」は大きなポイントです。私自身はISCOに相談し思いを伝えたことで、視野が広がり、道が見えました。気負わず何でも相談でき、親身になって話を聞いてもらえる雰囲気なので、業態・業種にかかわらず、一度は相談してみることをおすすめします。
※1 ISCOについて詳細
※2 特集記事:
その経営課題、専門家と本気で改善計画を立てませんか? <事例紹介> 石垣島の飲食店が「DX計画策定支援」を活用 | 運営からのお知らせ | 沖縄イノベーションマッチングサイト | インダストリンク
大きな転機となった専門家派遣。補助金申請サポートも充実。
ISCOの厚くて熱い「支援」を実感
「DX計画策定支援の専門家派遣」ではどんな効果がありましたか?
─DXに取り組むための「最初の一歩」がしっかり踏み出せたと感じられたことです。思っていた以上に大きな力になりました。
ご担当いただいた専門家の方は支援期間中数回来社され、とにかく丁寧に弊社の業務内容や現状、困りごとについて確認してくださいました。私やDX推進担当者だけでなく各部署の従業員にも直接ヒアリングしたり、ボイラー工事現場にも足を運んで、通信環境や作業内容を視察したり。その内容をもとに、デジタル化の必要性がある業務とそうでない業務の仕分けから行い、各部署の課題を整理して、デジタル化するならばどのレベルまで行うかを一緒に検討してくださったんです。

専門家派遣の意義と効果は絶大です。それを無料で受けられるのですから、活用しない手はないですし、このような支援があることをもっと多くの方に知ってもらいたい。私の正直な気持ちです。
─初期のデジタルツールの導入には「小規模事業者等デジタル化支援事業補助金(以下、小規模補助金)」を活用されました。
専門家派遣と平行して、ISCOから提案いただいた小規模補助金を活用しました。まずはスモールスタートで進めてみては、とアドバイスがあったんです。補助金には書類作成が大変というイメージがつきものですが、書き方に迷っても小規模補助金の担当者がすぐに電話などで対応してくださり、とても助けられました。そういう部分でも「支援いただいている」という実感がありました。
マイクロソフト365を導入し、報告書などの社内データをクラウド化※3することから、DXに向けて少しずつ環境を整えていきました。
こういったツールの選定も、ISCOを通してマッチングしたIT事業者(ベンダー)と一緒に行いました。専門家と作成した計画書をベースに、無理・無駄のない「使えるIT」を目指して。どんなに機能が充実していても、自分たちで運用・メンテナンスができなければ意味がない。IT事業者も親身になって、限りある予算の中で当社に最適なものを吟味し、提案してくれました。
DX推進にIT事業者は不可欠で、その選定はとても重要です。「一緒に作り上げていく」という気持ちで臨んでくださるIT事業者に出会えて本当に幸運でした。ISCOの支援を利用していなければ、マッチング※4できなかったかもしれません。ISCOを介することで、自社に合ったIT事業者と出会える機会は確実に増えると思います。
※3 クラウド化
既存の情報システムをクラウド(情報をインターネット上にあるサーバーに保存し、いつでも、どの場所からもアクセスできる仕組み)サービスに移行すること。
※4 特集記事:
【インダストリンク活用術】マッチングを活用してスムーズにIT化! 「大病院の院内業務にRPA導入」事例を交えてマッチングの流れとメリットをご紹介 | 運営からのお知らせ | 沖縄イノベーションマッチングサイト | インダストリンク
社内で助け合いながらDXを推進。
お客様のため、従業員のため、沖縄の未来のために。
─ツール導入にあたり、ご年配の従業員の皆さんにはどのようなフォローをされましたか。
長年やってきたことを変えるのは、誰にとっても時間がかかるもの。正直、年配の方にとっては抵抗があったと思います。寄り添う気持ちで焦らずゆっくりと、紙からデジタルに移行する期間を長めに取りました。期間中も、つまずくことがあれば何度でも根気強くサポートしました。多少時間はかかりましたが、今ではクラウドもツールも難なく活用し、「こっちの方が楽だ」と言ってくれています(笑)。
導入期間中は、DX推進担当者だけでなく、従業員同士で教え合う姿があちこちで見られ、すごくいい雰囲気だなと思いました。
当社は創業からずっと、「お客様の困りごとを解決するのが自分たちの仕事」という思いを皆で共有しています。社内の困りごとも協力して解決しようという自然な流れが起きていました。お互いに助け合う社風があったからこそ、大きな変化にも対応できたと思っています。小さな企業ならではの良さ、チームワークが発揮された結果だと感じます。
─最大の目標であるDXの実現に向けて、「令和6年度沖縄DX促進支援補助金」の申請を行い、採択されました。
次の段階へ、ということで申請を決断しました。まずは小規模の補助金活用というスモールスタートから始め、自分たちに合ったペースで体制を整え、“満を持した”タイミングでDX促進支援補助金に採択されたのは、非常に良いプロセスだったと言えます。これも、ISCOからの提案や支援のおかげです。
DXにはどうしても費用がかかりますから、当社のような中小企業にとって補助金は大きな力です。計画的な推進に向け、活用を検討してみてもいいのではと思います。
システム設計についてはIT事業者とこまめに打ち合わせを重ね、当社がDXで目指す核となる「顧客管理のしやすさ」を追求してもらいました。こちらの希望通り、自分たちで運営・メンテンスができるローコード※5で提案されたことも良かったです。
これまでの人的支援と資金的支援がスムーズにマッチし、その成果を活かすことで、当社が理想とするシステムを構築することができました。
システムの運用については、令和7年度スタートを目標に、紙媒体からのデータ入力のための人員を2名採用し、着々と準備を進めています。
※5「ローコード」
プログラミングをほとんど行うことなくアプリケーションやシステムを開発する手法。
─DXで目指す業務改善と「ビジョン」をお聞かせください。
大きく分けて3つあります。まず1つ目は、創業から大切に保管してきた約40年分の膨大な顧客情報をデータ化し、サービス向上につなげることです。より迅速な対応や個別最適化した提案などに生かしたいと思っています。
2つ目は、業務の効率化をさらに進め、従業員の負担を軽減しつつ生産性を高めることです。働く環境や条件をより良くし、ワークライフバランスを整えるとともに、生まれた時間や余力で新しいことに挑戦する土台を作りたいと考えています。
3つ目は、AI活用を視野に入れ、現場で培われた技術やノウハウ、職人の知見を継承し、未来の技術者育成に役立てることです。
少し大きな話になってしまいますが、こうしたビジョンを実現していくことで、沖縄県全体の持続的な発展に貢献したいという思いもあります。当社だけでなく、沖縄の企業の経営者は同様の思いでいるのではないでしょうか。

【出展元】沖縄DX促進支援事業令和6年度採択企業の取組紹介
≪取材を振り返って:取材者コメント≫
取材中、何度も口にされていた「ちょっとずつ」「少しずつ」。沖縄ボイラエンジニアリングさんのDXの道のりは、後に続く従業員の皆さんが歩みやすいよう地ならしをし、誰ひとり取り残さないよう見守りながら、時には失敗も笑い飛ばしながらという、人の温かさを感じられるものでした。自社に合ったDXを実現した好例と言えると感じます。
ISCOでは、無料の相談窓口を入口に、それぞれの企業に応じた多彩な支援でDXをサポートしています。渡慶次さんの「本当に何でも気軽に相談できる、安心して話せる」という言葉が象徴するように、利用者の立場に立った支援を受けられることも特徴です。
DXに取り組みたいとお考えの方も、取り組む中で道に迷った方も、まずは『インダストリンク』相談窓口へ気軽にアクセスしてみてはいかがでしょうか。
<取材・執筆>
ライター 上地 里美
※当特集記事の内容は2025年2月取材時の情報です。
>>>インダストリンクDX相談窓口
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【出展元】ResorTechOkinawa『DXの手引 第一部 小規模企業の ITツール活用編』
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■DXの手引
第一部小規模企業の ITルール活用編
DXの手引 第一部 | ResorTech Okinawa
■DXの手引
第二部中小・中堅企業の DX取組編
DXの手引 第二部 | ResorTech Okinawa
■DXの手引き
第三部中小・中堅企業の 経営変革編
DXの手引 第三部 | ResorTech Okinawa
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