農産物の販売をwebデータベース型改善プラットフォームで一括管理 ― 沖縄県内企業の業務改善ソリューション導入事例

最終更新日:2021年10月01日

RPAやAI-OCRをはじめ、日々の業務の効率化に貢献する業務改善ソリューションには、さまざまなツールが提供されています。
当特集では、webデータベース型改善プラットフォームを導入され、沖縄の農産物の仕入れから出荷、在庫管理まで、農産物の販売の流れをクラウド上で一括管理されている沖縄県内企業様のリアルな声をお届け致します。
業務のさらなる効率化を目指して、データベース化、クラウド化など、ITソリューションの導入をご検討されている方には、何かしらのヒントが得られるかもしれません。ぜひ最後までご覧ください。


【目次】
  1. 1.webデータベース型改善プラットフォームとは
  2. 2.「合同会社denenおきなわ」様のwebデータベース型改善プラットフォーム活用事例
  3.  ・業務効率化のために手書きの紙管理をクラウド化して農産物の販売を一括管理 
 ・農産物の販売管理がkintoneで完結できる
 ・kintoneでデータを蓄積、スプレッドシートで分析。データ分析により予測を立てて販売戦略へ
3.まとめ - ITソリューションに関するご相談はISCOへ
    

1.webデータベース型改善プラットフォームとは

「webデータベース型改善プラットフォーム」の代表的なアプリケーションでは、プログラムやデータベースなどシステム構築の知識がなくても、マウスの操作だけで直感的に操作でき、ノンプログラミングでクラウド上にさまざまな業務システムを簡単に作成・使用することが可能です。

インターネットに繋がっていれば、社内にいる必要はなく、外出先や自宅、作業中の畑など世界中のどこからでも、パソコン・タブレット・スマホを使って自由にシステムにアクセスすることができます。複数のアカウントからの同時アクセスも可能で、リアルタイムに最新のデータを簡単に管理することが可能です。

Webデータベースアプリケーションは、社内にサーバを構築する必要はなく、ネット環境さえあれば容易に導入・運用が可能ですので、時間的費用的にもコストが抑えられるというメリットが挙げられます。     

2.「合同会社denenおきなわ」様のwebデータベース型改善プラットフォーム活用事例

合同会社denenおきなわ」様
【事業内容】農産物の生産・加工・販売
現在は農産物の販売が中心。沖縄本島南部の農家さんたちの拠点となって、食の安全のためにさまざまな形で農業をバックアップしています。


 【写真提供/ISCO】合同会社denenおきなわ様の作業風景。

【ソリューション概要】

設立時にwebデータベース型改善プラットフォーム「kintone(キントーン)」を導入、Googleスプレッドシートと併用して農産物の販売管理業務を行っています。
「Googleスプレッドシート」とは、Google社が提供するブラウザ上で利用できる表計算ソフトです。

■「kintone(キントーン)」とは
「kintone」は、サイボウズ株式会社が提供しているwebデータベース型改善プラットフォームで、開発の知識がなくてもノンプログラミングで自社の業務に合わせたシステムを簡単に作成できるクラウドのソフトです。
さまざまな事業に関するデータ管理に加え、ほかのアプリケーションで作成したデータを取り込めたり、外部サービスと連携でき、メンバーとのコミュニケーションなどもカバーできる、業務の改善を手助けする製品です。


「合同会社denenおきなわ」代表の三沢陽子(みさわ・ようこ)氏にお話を伺いました。
<取材日:2021年8月26日>
    

業務効率化のために手書きの紙管理をクラウド化して農産物の販売を一括管理

ー kintoneの導入理由を教えてください。

合同会社denenおきなわ(以下denen)は、個々の農家さんのこだわりを拾い、農業のスキルアップをお手伝いするなど、農家さんに寄り添う企業として昨年2020年2月に設立しました。
県外向けに農産物を大量に扱う事業者の中には、業務に必要な書類はすべて手書きで行い、納品書・請求書・領収書、同じことを3回も書いているケースがありました。
そのような状況を見ていましたので、紙ベースとなっている管理業務体制を見直したい、もっと効率的に農産物の管理や業務を行えないだろうか、そう考えていたところISCOの支援事業で派遣いただいた専門家から、「それならkintoneがおすすめですよ」と教えていただいたことがkintone導入のきっかけです。


【写真提供/ISCO】枝豆最盛期の合同会社denenおきなわ様の集荷場。

ー kintoneの導入や設定はどのようにされましたか?

Kintoneの導入前に、パッケージソフトのようにすでに完成されたシステムではなく、いっしょに考えながら作り上げていきたいと考えていましたので、kintoneのアプリ機能やリストの作成、スプレッドシートのマクロ作成(※)など、ISCOの支援事業で派遣いただいた専門家といっしょに作り上げていきました。
Kintoneに触るのも、システムを作るのも初めてのことです。何が必要で何が不要なのか手探り状態で、こちらの要望を都度お話して、半年ほどかけて今の形に落ち着きました。
当初は必要だと思っていたがいまでは必要ないかなぁと思えたり、いまでも試行錯誤が続いています。
出来上がったものを使うのではなく、使いながら作り上げることにより、頭の中が整理され、業務の精査ができたように思います。

※マクロ作成 ・・・ マクロとは、Excel等のスプレッドシート上で、決まった一連の手順を自動化することができる機能です。



ー kintoneを使うには、どの程度のITスキルが必要でしょうか?

アプリができていれば、日付や取引先、品目、数量など、必要な項目に入力するだけですので、ITスキルはそれほど必要ありません。入力方法を説明すれば、誰にでもできると思います。

<補足:kintoneはノンプログラミングでアプリを作成することが可能です。アプリ開発にも高いITスキルは必要ありません。>     

農産物の販売管理がkintoneで完結できる

ー どのような業務でkintoneを活用されていますか?

おもに活用しているのは仕入管理、出荷管理、受託管理、納品書(出荷管理)、納品書(受託管理)です。
それぞれアプリになっていて、そこに日付や取引先、品名、数量などの必要なデータを入力していきます。
例えば、農家さんから仕入れた農産物の情報が手書きの紙であがってくるので、それをkintoneの仕入管理の各項目に入力していきます。ときにはパートさんにもデータを入力していただくこともあります。
kintoneに入力した買入価格、品目・品種、取引先などのデータはすべて紐付いているので、とても入力しやすく管理もしやすいですね。入荷、出荷、商品の在庫確認、農家さんへの支払いなど、kintoneのなかで完結できるんです。一日の上がってきた数字がすべて連動されるので、導入して良かったです。


【写真提供/ISCO】合同会社denenおきなわ様の作業風景。採れたての枝豆をひとつひとつ丁寧に選別されていました。     

kintoneでデータを蓄積、スプレッドシートで分析。データ分析により予測を立てて販売戦略へ

ー kintoneとGoogleスプレッドシートを併用されているそうですが、どのように使い分けられていますか?

kintoneでデータをためて、必要なデータをスプレッドシート(クラウド表計算ソフト)に取り込んでデータ分析をするようにしています。kintoneはデータをためて定型的に全体を俯瞰してみるのには向いていますが、状況に応じて細かい分析をするには小回りがきくスプレッドシートが向いています。業務内容や分析の目的に応じて使いやすいツールを選択して業務効率をあげるようにしています。
kintoneとスプレッドシートを使って、どの月が売れる、どのタイミングで落ち込むなど、予測が立てられるようになったので、売り方を考えられるようになりました。
また、現在契約しているkintoneの契約プランでは使えない機能や仕様があるので、スプレッドシートでカバーしています。例えば、納品書を作る際、各品目の金額は表示されるのですが合計金額を表示させるのは高度なプログラミングが必要とされるので、納品書、請求書、領収書などの帳票出力系の作成はスプレッドシートで行っています。そのほうが修正もしやすく、結果として使い勝手がよくなる場合も多いからです。



ー kintoneを活用されるようになってから気付かれたことはありますか?

kintoneはさまざまな項目を細かく設定することが可能です。
例えば、トマトひとつとってみても、数ある品種のなかにさらにそれぞれ商品名があったり、kintoneではとても細かく項目を分けることが可能です。できるだけ細かく分類しておいたら後で分析しやすいかと思っていたのですが、結果はそうではありませんでした。細分化しすぎると、データを分析する際にかえって分析がしづらくなるということがわかりました。そのため漫然とデータを収集するのではなく、仮説をたてたり、明確な目的をもってデータを収集するようになりました。



ー 今後の課題や目標はありますか?

kintoneへの入力ミスや入力漏れをどのようになくすかが今後の課題です。
目標としては、いかにロスなく農産物を上手に回していけるか、kintoneとスプレッドシートを使ってさらに考えていきたいと思います。


ー kintoneの導入をご検討されている企業様へひとことお願いします。

kintoneは、私たちがシステムに合わせるのではなく、自分たちの業務に合わせてシステムを作っていくことができます。いまの業務を手助けしてくれますので、ぜひ活用されてください。
また、農家さんにもぜひ活用を検討して頂きたいですね。データを蓄積していくと畑の収益が見えるようになりますので、大いに役立つと思います。

    

3.まとめ ~  ITソリューションに関するご相談はISCOへ

データベース型業務改善型プラットホームの利点

1.直感的に使いやすい
2.データの管理がしやすい
3.プログラミングの知識がなくてもノンプログラミングで簡単にアプリを作成できる
4.インターネットが繋がっていればどこにでも導入・使用が可能

紙ベースを中心とした業務は、必要な情報(書類)を探すことが大変です。
ボリュームが大きくなればなるほど、その手間も比例して大きくなります。
また置き場を確保したり、紛失に気をつけたりと管理が大変です。
そして、情報のひとつひとつがバラバラの状態です。

IT化(データベース化)することの利点は、必要な情報を素早く検索できること、入力されたひとつひとつの情報がつながることです。そして、データを蓄積することで分析が可能になります。分析することで予測が立てられ、今後の事業に大いに活かせるようになります。
データベースをクラウドに作ることで、いつでもどこからでもアクセスでき、最新のデータを管理することが可能となり、活用の幅はさらに広がります。
さらに、ノンプログラミングであれば、導入も開発も簡単で、時間も費用も抑えられるというメリットがあります。
webデータベース型改善プラットフォームの製品はいろいろとあります。
ご興味を持たれた方は、まずはISCOへお気軽にご相談ください。

 

<取材を振り返って>

企業設立時に紙ベースからIT化へと舵を取った三沢氏のインタビューのなかで、とくに次の4点が印象に残りました。

・kintoneを活用するようになって数字が見えるようになった。
・仕入先・商品・売上・出荷先など、入力したデータがすべて紐付いているので、とても管理がしやすい。
・入荷、出荷、商品の在庫確認、農家さんへの支払いなど、kintoneのなかで完結できる。
・紙ベースではなし得なかったデータの蓄積ができるようになり、分析が可能となって予測が立てられるようになった。

三沢氏のお話から、データベース(今回はkintone)の便利さとデータを蓄積することの大切さがよくわかりました。
もし、個々の農家さんが共通のデータベースを使ってさまざまなデータを入力されるようになれば、個々の畑の収益が見えるだけでなく、地域全体の特性が見えて、地域農業として大きな戦略が立てられる、強みを得られるように思います。
「農業にはIT化が必須になってきますね!」とおっしゃる三沢氏の笑顔から、農業がさらに面白くなりそうな予感がしました。


【写真提供/ISCO】八重瀬町にある合同会社denenおきなわ様と緑が豊かな周囲の風景。


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<取材協力> 
「合同会社denenおきなわ」様(https://home.tsuku2.jp/storeDetail.php?scd=0000107042
/三沢陽子様
ご多忙のところ、取材ご協力まことにありがとうございました。

<取材・執筆>
合同会社ジョートー(https://jyo-to.okinawa/) 安積美加
※当特集記事の内容は2021年8月26日、取材時の情報です。